その土曜日、7時58分〜「悪魔」が浮き彫りにする人の形

静岡シネギャラリー右側で14:50の回。客入りは20人強。

カネに困った兄弟が実家の宝石店強盗を計画する。もちろん店番のバイトのババアには危害は加えず、宝石だけ頂く。保険がかかってるから損害はない。
実行にビビッた弟が知り合いを金で雇って犯行。ところがババアがその日に限って休み、ママが店番。弟は知る由もなし。そしてママと知り合いが銃で相打ち。そして兄弟の計画は警察にはバレない。


破滅のラストに向かっての一本の運命の糸みたいのが見えた。
原題は「Before the Devil Knows You're Dead」
悪魔が運命をいたずらして後ろで笑ってる、そして最後はその悪魔すら気付かないうちに・・・。


つのだじろうが「恐怖新聞」や「うしろの百太郎」で、呪われて殺しまくって、最後は家族が殺しあって自滅するパターンの話をいくつか描いてる。それを連想したために、もう少しドラマがあってから、最後は全員死ぬとばかり思ってたので、ちょっとラストは肩透かし気分だった。


描いてるテーマは気が重い。結局この親父はこの兄弟の父親なんだ、ってことなんだと思う。遺伝ってなんだろうね。この兄が全ての悪事の端緒なわけだけど、でもこれは善良に見える親父の血を継いでる、この親父にもこういう面がある、今までは表に見えてなかったけど、ってことなんだろうな。でもそれを消しにかかるということは、一種の自己否定なり自殺なりでもあるってことだ。


俺も親父とは正反対の性格だから、この兄と同じような葛藤をした時期があった。ここまでは引きずらなかったから今では良好な親子関係を築いてるけど、またこの兄を演じたP・S・ホフマンがイヤな奴でさ。アカデミー賞を受賞した「カポーティ」もまた俺に似た嫌なところがあって。顔とか体型とか外見は全然似てないんだけど、この人を見てると自分のイヤなところを見てるみたいでイヤなんだ。


最後に追いかけていく親父の車が、止まるたびに少しずつ壊れていくのが、ちょっとやりすぎな映画文法に見えて笑えた。導入部に見せる白人による白ブタのようなセックスの質感にしてもそうだけど、フィルムを見てるという実感を味わえる。この作品をおすぎが評価するのは理解出来るよ。