ライブ・演劇は風俗に沈むのではないか

最近は補助金をもらって機材購入してライブ配信事業をでっちあげて生き延びています。その中で今まで縁がなかった小規模ライブハウスだとか小劇場だとかと接点が出てきました。

小劇場に関しては客として足を運ぶ機会も多かったので知らない世界ではないのですが、小規模ライブハウスってほぼ無縁だったので刺激を受けています。

で、小劇場や小規模ライブハウスで動画配信を、という話がよく出てきます。でも、なかなか難しいと思いますよ、というのがこれからの話。

 

技術的な問題とか

いままでyoutubeにライブをアップしてきました、だからライブ配信をやろうと思います、というノリで配信を手掛ける小屋主やアーティストも多いのですが、あまりうまくいきませんよね。

よくきくのは「カメラを切り替えたら音が飛ぶのですが、どうしたらいいでしょう?」って、そりゃ安いセレクターを使ってたらそうなりますって。

でも高いスイッチャーは高いし、

とかリーズナブルで評判いいけど、全然入荷の気配もないもんね。

 

ま、「音が飛んだけど手作りの味でいいよね」って許される雰囲気なら、ぶっつけ本番で開始時間に「回線に障害が発生しました」で20分も客を待たせて、その様子を「ライブで配信に挑戦!」とかって静岡あさひテレビのとびっきり静岡で放送されてもいいんだろうけど、(実話ですが決して批判ではありません。あのミュージシャン割と好きです。ただミュージシャンはスタジオで、客は飲食店に集まって食べながらみんなで見る、って感染対策としてはどうかと思いますが)多くの現場はそうじゃないのでね。
怖い人に詰められる覚悟が必要。

機材も要るし、技術も要るし、そう簡単には準備が出来るものではありません。
映像の切り替え一つとっても、ちゃんとした現場にはアーティストとも言うべきスイッチャーのプロがいて、ライブだと即興で演出効果を高めるスイッチングをやってますよね。

スイッチャーだって芸術家ですよ。

もちろんカメラマンが芸術家だという話は分かりやすいでしょうし、配信の現場は何人ものプロの芸術家が支えています。

そりゃコストも上がるでしょう。

 

コストの問題とか

コストの詳細の説明は趣旨じゃないからしませんが、著作権に関していえば著作権料も手続きも今までのようにはいきません。

回線だってサーバだってそれなりにします。この辺はそれなりには変化していくでしょうが、コロナ以前に比べて負担が増すのは間違いありません。

ライブハウスや小劇場は今までだって元が取れるか取れないか、っていったら取れてない中で心意気で頑張ってたわけです。

そこに新たな負担って、とても抱えきれる状態じゃない。

 

どうするの?

だからどうするか、って、たぶん手としては3つあるでしょう。

①今まで以上の心意気で頑張る

②今まで以上に客へ経済的負担を求める

③今まで以下に質を落とす

 

というか、③は既に配信という時点で質は落ちているわけです。

生だから伝わるもの、というのはあるわけで。ライブや小演劇が好きな人にとっては価値を見出せる要素の一つです。

もちろん、そこに価値を見出せない人もたくさんいて、そういう人が気軽に「youtuberみたいにやれ」と言うのですが。

 

②について、値上げしてもいいよ、という人もいるでしょう。一方で当然値上げして離れる人もいるわけで。そもそも損益分岐点が存在しないような気もします(エビデンスなし)

少なくとも質が落ちている以上、相対的に客の経済的負担は既に増えてるともいえます。

そうなると①今まで以上の心意気で頑張る、ということが求められてきます。

 

今まで以上の心意気で頑張るとはなにか

ライブにせよ演劇にせよ、基本的なビジネスモデルとしては体験とゼニの等価交換なのですが、もう一つの要素があります。それは夢見て頑張ってる人を応援したいという本能的な欲求にこたえる、ということです。

冒頭に名前を出さなかったライブ配信がうまく行かなった某ミュージシャンもそうですが、いいおっさんが分かりやすく頑張ってるわけですよ。
大道芸人だって若い芸人が難しい技を涼しい顔して決めるのも応援しやすいですが、芸人なら普通にやる人も多いような芸を、いいおっさんが歯を食いしばって頑張って決めたり決められなかったりするのもまた、応援心をくすぐるというものです。

そこに訴える、ということになると、体験にゼニを出すのではなく、人にゼニを出す要素というのが強くなってきます。

これが演劇で行きついたところが、クラスターにもなったJINROとかじゃないんですかね。ホストまがいだと揶揄されてましたし。

男女逆にすれば援助交際まがいの売り方をしてるアイドルや女優も同じだと思います。

そういうものしか、今の形の演劇としては生き残っていけないのではないでしょうか。

 

ライブや演劇は風俗産業化するのか

音楽体験・演劇体験とゼニの引き換えではなくなったライブや小演劇は、ますます属人的な接触ビジネスとしての色合いを強めていくことでしょう。

接触ビジネスの先輩に身近なところでは風俗産業があります。風俗産業の在り方と、これからのライブ・演劇の在り方との間には共通点があるような気がします。

つまり、感染対策をしているからその存在は認められるけれど、行くと後ろ指さされる場所。感染したら自業自得と言われる場所。

そして(ルールかマナーかは別として)合法的な場所として存在するには制限があるからこそ、その制限のない非合法な場所も存在するジャンル。

どんな病気を持ってるのか分からない女の子を非合法に買う男がいるように、感染リスクの高い場所でのライブ・演劇もアンダーグラウンドで生まれるのではないか、と考えます。

そのときに社会がどう出るか、あまり想像はしたくありません。

 とはいえ、もともと役者なんて河原乞食なんだから、そこに戻るだけ、って考え方もありますけどね。

つーか山城新伍さんってすげー人だよね。死んでから分かりました。

生きてたら、なんて言っただろう?