令嬢嬲り 姫野カオルコ

ISBN:4576860526
扉を開けると吾妻ひでおの推薦文。「作者の姫野(きの)カオルコ嬢には」
うげーーーーーー!てっきり「ひめの」だと思ってた。今まで姫野カオルコについて口にしたことは…ない、記憶にはない。大丈夫。文字で書いている分にはゴマカシがきくぞ、ぜぇぜぇ。
まったく西原理恵子を「に」行に並べた浜北のブックオフを笑えない。
7篇の異色の短編集。と書くと姫野カオルコのSM小説なんて異色に決まってるだろ、と言われそうだが、そうではなく官能小説としてかなり異色。
7篇の作風がそれぞれ違う。
デビュー作で表題作の「令嬢嬲り」はSM小説というより今のマドンナメイト文庫的な美少女小説。ただし人間を浮き立たせる情景の描写が格段にキメ細かい。
「甘蜜の屈辱-ある凡庸な男のアルバム」は松浦理英子を彷彿とさせる冷たさ、結末はなんと説明したらいいだろうか…。
「セーラー服聖少女受難記」の出だしの文末は「〜です。」「〜います。」「〜です。」「〜です。」…小学生の作文じゃないんだから…と思って読み進めるとストーリーがぶっ飛び過ぎ。ギャグ小説ですか?筒井康隆ですか?
「舵-女教師恥舞」では正統派の官能小説を読ませたかと思えば、続く「聖ザベリオ女学院 淫虐の苑」では森山塔の絵が似合いそうなお上品ドタバタレズコメディを披露。
「絵里香-かわゆい獲物」はふたたびマドンナメイト文庫タッチではあるが、どこか中高生の学年誌に掲載されていそうな軽い読み物、最後の「美しき幼獣たち」は子供の不気味さを描いたホラータッチ。
共通して言えるのは話し言葉での1人称が多く、少女小説を連想させる。姫野カオルコはSM小説でデビューしたと書かれることが多いけど、これを読んでSM小説と思う人がどれだけいるだろう?確かにSMプレーは書かれているが、それがSM小説の十分条件ではないだろうよ。
じゃあなにか?って言われたら、なんだろう?
異色のなにか、か。
松平龍樹に匹敵するインパクトがあった。