ドラフト王国 ISBN:4916124367

初めて野球の本が売れた。これは俺が97年に新刊で買って1回読んでそのまましまわれた本。ブックオフでも時々見るし、売れねーだろと思ってたらそこそこの値段で売れた。なんだろ?と思って改めて読み返した。
書いてることは分かってるんだ。日本唯一のドラフト評論家としてメシが食えているのかどうかという半シロートの願望や妄想の本。鉄道で言えば冷蔵庫こと川島令三に近い存在の人。
改めて読み返してみたんだけど、いま(97年秋)監督をやるなら横浜がいい、という文章に目をひかれた。翌年98年は日本一だ。97年はヤクルトと優勝争いをしたが、それは30年に1度の椿事だと思われていた。
さらに驚いたのが「5年後を予想する」。
97年末の時点でダイエーパ・リーグを制覇する、という記述は相当勇気が要ったことだろう。なにせ前年96年には王監督が生卵をぶつけられたぐらい低迷していたのだから。
打線の厚みとして名前を挙げた城島・小久保・井口・村松・松中、浜名・柴原・大道は全員が活躍し、ピッチャーの整備が急務と指摘したその通りにその後のドラフトで即戦力投手を獲得してダイエー王国を作り上げた。
さらには黄金時代の終わった当時の西武にFAや大物監督を招聘せず、スラッガーの育成と投手陣の一新を指摘して、スラッガーこそ外国人に頼ったものの、指摘の通りの結果になっている。
オリックスの選手数の少なさに少数先鋭はありえず幸運は続かないと批判し、日本ハムの即戦力志向に起因する大器の欠如、近鉄の将来性のなさの指摘など恐ろしいくらいだ。
そして続くのが「1リーグ制移行の危険な罠」「球団縮小で長嶋巨人のようなチームがあふれる」である。
これか!
即戦力選手偏重の今の風潮では全体の選手数削減の方向へと動き、高校生からプロ入りしてプロ野球界を支えていく大器の芽を早々に積むことにつながる。
そしてロートルの派手なスラッガーばかりが重んじられ、今の巨人のような走って守る部分・本来の野球の3分の2を根底から否定するバカな野球をする球団が増えていく。
今こそこの本を再評価すべきだ。