いのちの食べ方

6月12日、シネギャラリー右側で15:40の回。客入りは20人強。
語りも音楽もない、食材が作られるまでの映像。

屠殺シーンもあったし、血が噴出す場面もあったし、その部分だけを取り上げれば衝撃的といえるのかもしれないけど、実際は淡々と描かれている割には配慮がされている構成になっている。
つまり屠殺に至るまでに、資本主義社会が求める合理性に最適化された動植物・そして人間の姿を延々と見せられて、命というものが果てしなく軽いものであるように思わせるのだ。
豚の死骸から豚足を切り取る、これは神(一部を除く)が与えた恵みだけど、ラインに乗ってくる豚の死骸から一日中豚足を切り取り続ける仕事、これは見えざる手を持った神による、人間を破壊する行為だろう。

軽んじられた命が食材となり、食事となる。もちろん食材「工場」でも昼には食事が行われる。この工場が自然の営みから遠いように見えれば遠いほど、その中での食事が不味いものであることが描かれている。
無機質な部屋で、一人で、食べ物に向かわずにどっか明後日のほうに視線をさまよわせながらぱさついたハンバーガーをぐいぐいと押し込み、ドリンクで流し込む。食材の製造だけではなく、食事そのものが自然の営みから外れた単なる腹ふさぎになってしまっている。
このことが一番恐ろしかった。