純喫茶磯辺

伏見ミリオン座で11時の回。客入りは40人ほど。

雨上がり宮迫演じるダメ親父は仲里依紗演じる娘と2人暮らし。離婚する時に親権を死守したらしい。
遺産が転がり込んでダメ親父はますますダメに。一念発起したかに見えて取った行動は女にモテるための喫茶店開業。
オヤジが美貌に一目ボレして採用した美人アルバイトと、一癖も蓋癖もある常連客に囲まれて、友達にも恥ずかしくて言えない店の手伝いをする娘。その心の支えは常連の若い小説家だった。

ダメ人間の面白さを期待して行って、そういう面白さでは期待はずれだったけど、それとは別の意味で満足した。
なにが笑えるって、しっかり者に見えた娘も実はやっぱり親の血を引いていたというところ。
そしてなによりも、人というものは自分の選択で生きて、その生の中で引き寄せられるように出会いがあって、そして必然のように別れがある、その素晴らしさと切なさ、古い評論文でいうところの人間賛歌っつーの?そういう部分がいいんだよねぇ。

偽マスターはどこかでたたずみ続けるだろうし、セクハラ野郎はまたどこかでセクハラするだろう。
どこからか来て、どこかへ去っていく、その一瞬の交わりの間に心に大なり小なり波紋を作る。そのようにして時間は流れていく。

描かれたさまざまな人間関係の中で一番まぶしく見えた似た者同士の親娘関係だって、あと数年もすれば終わってしまうものなんだろうし、宮迫はロクな最期を迎えないだろうけど、それもまたよしだ。

ダンカンと麻生久美子の関係、知らなければただのセクハラだけど、知った後には同じことをしていても別のことのように見えるあたりとか、その辺も上手い。