歩いても歩いても

シネギャラリー右側で19:30の回。客入りは15人ほど。

阿部寛夏川結衣の夫婦役とくればどうしても「結婚できない男」の後日談を連想してしまうが、この映画では夏川結衣は子連れでの再婚。だから阿部寛の実家に子連れで帰省するのが怖い。阿部寛も親父としっくりいってない。
阿部寛の妹のYOUは典型的な明るくてうざい営業マンの夫と帰省。子供も明るくにぎやか、樹木希林のおばあちゃんもこっちの子供が好き。そのYOUは実家を改築して自分たちも住む計画をしている。
帰省の理由は早世した長男の命日。

一見ありがちな親族の集いに見えて、ここまでありがちなやり取りは・・・実は結構あったりする。そしてその裏も。親戚付き合いあるある大事典の様相を呈する映画だ。
表の部分と裏の部分を両方描いて、その両方にあるあるって言えて、それでいてその裏の部分ってのも、ああ、こういう風に言われちゃってるんだろうな、って実は薄々感づいていて実は裏じゃなかったりする。

でも一番深い部分までは結局分からない。デブを毎年呼んでる理由だって本当にあの通りなのか、あの通りだったにしてもそれは永遠に続かないわけで、呼ばれなくなったらそのことで許しを与えることになるところまで考えてるのか、よく分からない。いや、親族なら分かるのかな。少なくとも映画では分かるようには描いてなかった。
ただひとついえるのは、デブを呼ぶ理由はネガティブなものだけど、それを明かす樹木希林が決してネガティブな存在に見えない。身内ってのはそういうものだ。

一見暖かさを描いているように見えて、実は冷たさも同様に描いている。そのことが尋常でないリアリティを持たせている。自分の心にある氷で出来た刃みたいなものに気付かされると、なかなか親戚に会いにくくなる、いい意味で実に嫌な映画だ。