私たちの幸せな時間

「離れるほど近くなる。流されて生きる者にとって純愛映画の決定版」



シネギャラリーで14:20の回。満席。

うち男は俺を入れて2人。

10代20代なんか当然いなくて、30代は俺だけ。40代もいなかったんじゃないかな。



心を閉ざした死刑囚と、教悔活動のシスターの代理で面会を続けるリストカット女。

親に捨てられ孤児として育ち、弾みで殺し、疎外感を持ち心を閉ざした死刑囚。

方や恵まれた経済環境に育つもある事件をきっかけに自暴自棄になりリストカットを繰り返す女性。

まったく接点のないはずの2人が、同じ痛みを持ち、寄せ合うことが許されない心と心の行き場を求める。



演出がいいんだよなー。面会室のガラスの向こうのユンスと、ガラスに映ったユジョンが並んで寄り添ってるように見える。

でもガラスの壁がない面会の時には正面から向かい合うだけ。対立したり、歩み寄ったり、決してひとつになることなく。

ユンスの代わりにユジョンが写真を撮りに行く。その心の中では2人は一緒だっただろうし、最後に生と死が2人を分かつ時にはじめて心が通じ合う。

離れれば離れるほど近くなっていく、そんな純愛が羨ましかったかな。

この世とあの世というもっとも遠い距離だからこそ、今はもっとも近くにいるんだろうし、そうであってほしい。



結局2人とも、言葉は悪いが運命に流されて、淀みにたまって、にごった水の中でまとわりつきあうヘドロのような人生なんだよなー。

最愛の妻子を殺されて、生と死が分けられたらとっとと次の女を見つけて婚約して、支えてもらいながら孤高の正義の遺族として戦う、そんな運命を切り開く器用な生き方がもっともお得なんだろうけど。

そういう生き方を是と出来ない者にとって今年を振り返って1・2を争うだろう傑作。