ラブファイト

静岡ミラノ2で19:30の回。客入りは11人。


近年稀に見る怪作。
大作・アニメを全力で作った後に東映が低予算で適当に作る、よくある穴埋め青春映画かと思いきや、殴り合って分かり合う的な本格的なボクシング人情映画。まったく期待せずに大沢たかおだけを見に行って、思わぬカウンターパンチを食った。


幼稚園児からいじめられっ子だった林遣都と、それを守ってきた強い北乃きい
高校生になって庇護されることに嫌気が差し、ボクシングジムへ。一人の男として自立。そこに別の女が現れて、北乃きいともどもジム入会。

大沢たかお演じる会長にも林遣都同様に結ばれるべき人とすれ違いの過去が。林遣都が大沢会長の写し絵になってるような状態。
そして大沢会長は身を挺してメッセージを送る。


これ、時代設定はいつだろうか?1990年のタイトル戦のポスターが古かったから現代なんだよな、やっぱり。
雰囲気は80年代テイスト。古い下町、セーラー服、そしてなにより高校生が主人公なのに携帯電話が出てこない。
林遣都の恋人役の女の子。不細工さ加減といい、演技下手といい、80年代のアダルトビデオってちょうどあんな感じだった。


この80年代の雰囲気を意図的に醸してるのだとしたら、このドラマは80年代で高校生だった頃の会長のエピソードとリンクしてる部分があるんだろう。というよりも時間軸を無視して、個人を無視して、一人の普遍的な男の話として見るべき作品。
もちろん北乃きいも含めた3人の運動量も素晴らしい。恋愛ドラマは甘酸っぱい。ただ、そこだけに目を取られると冗長に感じられる場面も多いはず。


10代半ば特有の、地の底から突き抜けてくるような止められない魂の疾走を、どの世代にも当事者として受け止められるようなつくりで余すことなく描いている。魂があれば受け止められる、という話だ。
傑作でも快作でも力作でも秀作でも良作でもない。ただ、行き場のないこみ上げる気持ちを抑えて生きていると、何回も見直したくなる忘れがたい作品になるだろう。