夕陽

俺は石原慎太郎三島由紀夫が嫌いだ。
しかしこの二人のこんなエピソードを気に入ってる。

三島は政治家になった石原を祝福しなかった。
三島は石原に「もう君とはいままでみたいな付き合いにはなるまいから、最後に一つだけ忠告をしておくけど、君が将来どこかへ遊説に行く。その帰り道に海岸を通る。波の彼方に夕日が沈んで行き夕焼けがすばらしい。そこで君が秘書官に車を止めさせて、この夕焼けをしばし眺めていこう、というようじゃ君は本物の政治家になれないよ」そう、突き放すようにいった。
「どうしてですか」と石原がきくと、「いやそうなんだ。君は絶対に政治小説を書いたり、芸術的な政治をしようなどと思っては駄目だ。そんなことをしたら破滅するよ」と三島はいった。
石原は「勿論わかってますよ。僕は決して政治そのものを主題にした小説は書かないだろうし、芸術的な政治なんてありえないとも思っています。でもね、僕は公務の帰り道にでも車を止めて美しい夕焼けを眺めますよ。その感性が政治に不要なものとは絶対思わないな」というと、「ま、いいだろう」と三島はいっただけだった。
http://blog.livedoor.jp/bananahiroshi/archives/50730961.html

そして石原慎太郎はその感性を求めた有権者に応え、やがてその延長にある公私混同により三島由紀夫が指摘したように破滅しようとしている。


公務の帰り道ではないけど、今日、思わぬ美しい夕陽に出会って、思わずバイクを止めて見入ってしまった。

一面の真っ赤な夕焼け。端から端まで走るヒコーキ雲。
あたかも飛来物が地平線の向こうに墜落して燃え上がったかのような景色だ。
これを見たら三島由紀夫が総理大臣だったとしても足を止めたはず。
出来るだけ自然に近い形でこの時を過ごそう、そう思ってメットを脱いだ。


メットのシールドはオレンジだった。