書店有料化に関して

書店は入場料を取って良い
http://chikura.fprog.com/index.php?UID=1227163619
というエントリを皮切りにあちこちで書店入店有料化論争が起きてる。
思うところあって口を挟もうとはてなブックマークに登録しつつ機会をうかがってた。話が拡散し始めたのと、後回しにしてるうちに面倒になって何も書かなくなりそうなので、取り急ぎ思いついたまま書いてみる。


入店料をとって購入者には返却する方式は、書店のビジネスモデルの根本からの転換である。
書籍という物体を販売するモデルから、書籍の持つ情報を提供して対価を回収するモデルへの。この点で漫画喫茶化という指摘は正しい。
ただし新刊書店の直接的な漫画喫茶化は取次との兼ね合いで無理。


立ち読みの目的もいろいろあるだろうが、全部は要らないけどちょっとだけ要る、という顧客の需要が存在する。ちょっと連絡先だけ覚えておきたい、ちょっと分量だけ知りたい、こういう切り売りのニーズに既存の書店モデルは応えていない。
これは書籍という形式自体が持つ宿命であり、そのために情報の切り売りという概念を持てず、それを商品とみなすことが出来なかった。立ち読みを漠然とした客寄せ程度にしか捉えず、商品の無料提供をプロモーション活動と定義することもなかった。


他の業種で似た事例を挙げれば有料試食というものがある。ワインなどの有料利き酒などもそうだ。
(去年あたり話題になってたが、そういえば最近聞かない。定着したのか廃れたのかは要検討)
飲食物と書籍に共通するのは、消費すること自体が顧客にとって大きな負担がかかるということ。
摂取カロリーには限度があるし、読書に費やす時間にも限度がある。
幅広い楽しみを志向するならば浅くならざるをえず、顧客には立ち読みならではのメリットが生じている。その方向性は書籍という物体の消費活動と必ずしも一致しているわけではない。


入店有料化に失敗するケースは限定的だと思われる。
1)書籍という物体を日常的に消費している顧客への影響は少ない。
2)立ち読み客のうち、書籍という物体をまったく消費しないヤツはもともと売り上げに貢献していない。
3-1)立ち読み客のうち、イレギュラーに書籍という物体を消費する顧客が、最初から購入の意思を持っている場合は影響しない。
3-2)立ち読みで内容を吟味して買う場合にのみ影響する恐れがある
ただし、入店料収入でカバー出来る可能性がある。入店無料目的の購入を促し、併用しているネット書店から奪える可能性もある。


いずれにせよ、上記3種の顧客がどの程度の割合で存在するのかの検討が必要だし、なにより他店との差別化が絶対条件。


時間をかけてもう少し分かりやすく書くべきなんだろうけど、時間がないのでこの辺で。