新宿インシデント〜正真正銘のヤクザ映画

藤枝シネプレーゴ1番スクリーンで16:20の回。客入りは12人。
実質、ヤクザ映画なんだよな、これ。その臭いを嗅ぎ付けた客層の悪いこと。前の席に足を放り出して見る客なんて数年ぶりに見たよ。その時もヤクザ映画だったな、「極道の妻たち」。
かと思うと予告編が始まっても電話してる奴とか。藤枝の民度の低さじゃないだろ?


ジャッキー・チェンが香港映画に戻ってきてからの現代モノはいい作品が多くて、今回も期待を裏切らなかった。
90年代、日本にボロ船で密入国した不法滞在者。初めは真面目な底辺労働者だったのが、いろいろあって新宿を仕切るようになる。
設定とストーリーはご都合主義だけど、抑圧されていた者が解放された時の弾け方つーか暴走な、この説得力は抑圧されたことのない人間は知っといた方がいいよ。


あと中国人の出身地つながりでの団結力の堅さつーか、どういうのかな、犯罪組織つーと犯罪をするために作った組織のように受け取られがちだけど、自覚がないのに犯罪組織としての条件を備えちゃってるあたりとか、あの辺の中国人コミュニティの描写がリアルに、かつイキイキと、魅力的にすら描かれてて、作品の中でいいアクセントになってる。


ここ最近、甘っちょろい映画しか見てなかった。つくづくそう思ったね。このハラワタをねじられるような痛みと、生き急がざるをえない焦燥感、久々に身にも心にも痛みが響く作品だった。
結局さ、ジャッキーも弟も、穏やかに幸せに暮らしたかったのよ。それを実現するためにはどうすればよかったんだ?
「やっぱり俺は気弱だった」なんて、最期の言葉としては映画史上かつてない情けない言葉を残さざるをえなくなったのはなぜだ?

暴力つーのは常に追い込まれた弱者の武器。強者の武器は圧倒的な支配。
支配してる方はそれが当然だと思ってるわけよ。それが善であれ悪であれ、な。
この暴力というものの構図を見事に生かした良作と言える。