すがすがしい話

高校の同窓会が荒れまくった時の話
http://anond.hatelabo.jp/20090501205227

つー増田の投稿なだけどさ、要するに高校3年生の文化祭の出し物でピアノを弾く奴が必要だった、でも立候補者がなく重い雰囲気になってたところに内向的なピアノ未経験の女の子が立候補して、クラス一丸となって頑張った、ところが何年経ったか知らんけど同窓会の席で、目立たなかった男子の中に世界的なピアニストが混じってたことが判明した、つー話。


正直言って俺は「ショーシャンクの空に」を見終わった後のような爽快感を覚えたんだ。


このクラスの雰囲気が目に見えるようで本当に嫌だ。
ピアノ担当の立候補者が出てこないところじゃなくて、そこに至るまでの過程が嫌だ。


まずそもそも、ピアノが本当に必要だったのか?アカペラとかで代用できないのか?とかね。
大方、なーんにも考えないで軽い気持ちでピアノとか言い出して、誰か経験者いるんじゃね?とかいうノリで引っ込みがつかなくなったんじゃないのかな?
さらに想像すると、内向的な女の子が名乗り出るまでになにがあったのか?
例えば、○○さんは吹奏楽部に所属していまーす、とか、中間テストで音楽100点でしたー、とか、そんなノリの話があったんじゃないの?
なんの思い出もない高校生活を変えようと一念発起しただけだったら、それだけでもこの話はずいぶんと救われるんだけど。


問題はピアニストになった男子。
俺がガキのころ、音楽を習うのは女、というイメージが強かった。ピアノを習ってて「女男」とか言われていじめられてた奴が大勢いたよ。大勢というほどいたよ。
なんで大勢いたと言えるかといえば、俺もヤマハ音楽教室に通ってたからね。幸いにして俺は友達に恵まれてたから良かったけど。
こんなことで同窓会が荒れるクラス、ピアノが巧いってバレてたらいじめられてただろうね。


だからさ、俺、このピアノ男子の心の中を思うとたまらなく抱きしめたくなる。
絶対に知られちゃいけないことだったんだよ。ピアノを習ってることは。もしかすると小学校・中学校といじめられ続けてきたのかもしれない。特に小学校・中学校は公立だと隣近所の話になっちゃうから、どうしてもピアノなんて音の出るものを習ってるとバレちゃうんだよね。


これが高校となると事情は違ってくる。隠し続ければ徹底的に隠し続けられる環境。

クラスではさほど社交的ではなかったとある男子生徒

いじめられてはなかったみたいで良かった。高校進学して環境を変えて、近所の奴が少ないところで解放されて平穏な日々を送る、それだけを夢見て中学校卒業まで我慢してきたと思う。
 


ピアノ、それは彼にとっては誰にも犯すことの出来ない聖域だっただろう。
「音楽は決して人から奪えない」
 


件のホームルームで、彼の心がどこにあったのかは知らない。しかしな、カミングアウトした後には心の聖域を侵されることは十分分かっていたはずだ。
同時にカミングアウトしないことに後ろめたさだってあったはず。
「忍耐にも限度がある」
 


後ろめたさすらなかったら、それは悪党だけどさ。現にクラスメートは彼を悪党だと思ってるんだろう。
「刑務所の外では真面目な人間だったのに、中では悪党」
 


彼の心の中は、この言葉を支えにしていたはずだ。
「主の裁きは下る いずれまもなく」
 


そして今、海外で羽ばたくピアニストは彼の地からこう言うだろう。

「希望はいいものだよ。多分最高のものだ。
いいものは決して滅びない。」

「」の言葉はすべて「ショーシャンクの空に」からの引用。
それ以上に「ショーシャンクの空に」でアンディは、レッドの価値観を否定した秘め続けてきた行動をするわけだけど、それを知った時のレッドと、この増田とは大違いだ。
それも仕方あるまい。

当時あの高校の敷地内が全てだった俺達の価値観を、なんだか最悪のタイミングで彼に否定されたようで、俺はその夜まんじりともしなかった。

いまだに高校の敷地内の価値観を否定せずに持ってるんだから。





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