沈まぬ太陽〜日本というシステムはなにを目指すのか


シネプラザサントムーン・シアター2で13:35の回。客入りは60人ほど。
これはすごい映画だ。今年を代表する作品のひとつだ。



原作については、全く逆の日航側から見た視点でのこういう指摘がある。
http://www.rondan.co.jp/html/ara/yowa3/index.html
しかしどんなドキュメンタリーも事実を100%再現することは不可能だ。だから伝えるべきテーマを100%伝えるために、手法として誇張や改竄、捏造が行われることを、俺は積極的に支持する。
とはいえ作品に挟まれている10分の休憩中、報道を中心に構成されたパネルを食い入るように見てる人が多かった。
この人たちにとっては、このパネル同様にこの映画がすべて真実と受け取ったとするなら、それはそれでこの手法にも大きな問題は残る。


ではこの作品が伝えるべきテーマとはなんだろう?と考えたとき、まず真っ先に行き着くところは、肥えた豚である日航を潰せ、ということだ。
このあたりの経緯については週刊ポストの11/6号(10月26日発売)に詳しい。誰がモデルで、実際はどうで、その裏につながってるものがどうで、現在にどう影響してるのか、分かりやすくまとめてある。

沈まぬ太陽』とJAL[再生]の命運↓政官業「腐敗のトライアングル」は今−↓○フラッグキャリア再建は法的整理しかない↓○「9000人リストラ」と8つの労組↓○企業年金半減にOBたちが大困惑↓○羽田空港ハブ化という逆風↓○原作モデルの元幹部が明かす真実↓○映画製作費23億円を巡るドタバタ ↓○シナリオの書き直しは20回↓○映画監修に名を連ねたJALのOB↓○フジ子会社が製作委員会から謎の降板↓○御巣鷹山の遺族は映画をどう観た?↓○ 渡辺謙が出した山崎豊子への直訴状 ほか

こういった公的な事象だけではなく、それぞれの人物には私生活があり、1人の人物の周りにはその数倍の家族がいて、おのおのの人生が振り回されるということも余すことなく描かれている。
そしてそれ以上に俺の心に迫ってきたのは、俺が香川照之が好きだから特にそう思ったのかもしれないけど、組織における個人の力とはなんだろう?というむなしさだ。


ストーリーは渡辺謙演じる恩地元を中心に進んでいくが、香川照之演じる八木和夫が不正行為で、三浦友和演じる行天四郎の工作資金を捻出し、その工作で日航が新たな利権漁りのネタになるのを回避して会社を救い、一方で行天四郎を告発して権力の亡者を放逐する。八木和夫はいわばこのストーリーでもっとも日航を変えた男でもある。
しかし、だからといって日航が変わるわけではない。しょせんはトカゲのシッポ切りならぬシャッポの交換で終わってしまう。
命をかけた行動にも関わらず、だ。しかもこの作品には描かれてはいないが、もちろん八木和夫にだって家族はいる。


誰が幸せになってるんだろう?この日本という経済システムの中で。