泣きながら生きて

静岡シネギャラリー右側で17:10の回。客入りは8人。
涙なしには見れない作品。
元はフジテレビのドキュメンタリー番組。反響が大きかったこの番組を、一人の大学生が劇場公開に持ち込んだという。


泣かせの定番といえば別れと再会だろうが、この映画はそのほとんどの時間が別れと再会のシーンだ。そして描かれる別れと再会のために費やされた時間は父と娘は8年、夫と妻は13年にも及ぶ。
その間、まっすぐに貫かれた家族愛には涙するしかないのだが・・・

だが、なのよ。
確かに望まぬにも関わらず、だれのせいでもないのに借金を背負ってしまって帰れない不法滞在者となってしまった父の事情というものはある。
具体的に言えば中国では一生モノの借金を背負ってまで日本に留学してきて、生活費はバイトで稼ごうとしたら、村おこしで設立された留学先の学校は北海道の山奥だった。バイト先なんかない。そのまま帰国すれば一生モノの借金を背負ったまま。
意を決して脱走、上京、そして不法就労
そして借金を返し終わったあとも、留学の夢を娘に託して働き続けて送金。その中国のデブメガネ田舎娘は最後にニューヨークで垢抜けた女医さんになるわけだけどさ。


再会と別れの場面その場その場は、あまりにも長い時間と思いの重さに問答無用に圧倒されて感動してしまう。でも引き裂かれているのは直接的には誰かが強いたわけじゃなく、あくまで自己責任の範疇の話。借金返し終わったんだからとっとと帰れ、と。
そう思ってみると、ところどころにドライな打算が見え隠れする場面があったりもする。要するに自発的に自己の利益のために不法滞在して不法就労してる。


でも、親の子に対する思いってのは、そんな社会的な正当性の問題じゃないんだよな。
必死に次の世代に受け渡そうとしているものの重みの前には全てが許されると思う。この必死さがあるから中国人は強い。