シッコ

「泣けるとは思わなかった」



MOVIX清水で18:50からの試写会。

テーマはアメリカ医療の新自由経済化の弊害、でもその問題の根源が民主主義の形骸化にあることを的確に描いていた。

丸川珠代みたいに無批判に「日本に生まれてよかった」的な感想を持って、この映画をガス抜きだと思ってるようじゃムーアに笑われるよ。だってそもそも民主主義がほとんど機能してこなかった日本の向かう先は明らかなんだから。

下手すりゃ国民皆保険が日本だけのものと思ってる人もいるけど、決してそんなことはなく、フランスやイギリスなどは日本以上に充実している・・・ように描いているけど、実際はフランスやイギリスの制度にも問題はありそうだ。とはいえ、別にこの映画は学術論文でも報道番組でもないし、公平性は必要ないだろう。

とにかくこの映画、ムーアの民主主義への渇望とその実現のための後支えの覚悟が痛いほど伝わってきて泣ける。まさかマイケル・ムーアで泣きそうになるとは思わなかった。

ボウリング・フォー・コロンバイン華氏911と続いてきた路線は民主主義を歪める勢力との戦いという点で一直線上にあるし、続き物と言ってもいい。

本作では保険業界への憎悪や挑発といった悪感情を導き出すような演出は控えめ。攻撃的なムーアを見たい向きには期待はずれかもしれないけど、でもこのくらいのバランスの方がより多くの人の心に響くんじゃないかな。

冒頭に保険会社の支給妨害の被害者で、マイケル・ムーアの名を出して独断で交渉した人のエピソードがある。ムーアはその行為を肯定的に描いている。

俺を利用しろ、と。立ち上がれ、と。



東京では8月25日公開だそうで。静岡では1週遅れということもあって、静岡銀幕週報への掲載は来週回しとする。

http://www.mag2.com/m/0000227749.htm