eatrip(イートリップ)

静岡東宝6階で19:00の回。客入りは6人。
「食」を通じて生きるとは何か、幸せとは何かを問うドキュメンタリー。
つーと、とかく命を奪って生きる人間の本質をことさら強調したり、環境問題や経済問題に絡めて説教したり、そういった作品になりがち。ところがこれは違った。



いろいろな立場の人にインタビューをして、その合間に料理が作られていく。
そのインタビューも、中には食事は栄養補給と割り切っていて、楽しみは他で得られればいい、という人がいたりして、その人のことも肯定的に扱っている。
つーか、インタビューの数々にはっきりと見える方向性というものが感じられない。浅野忠信UA内田也哉子のような表現のプロに限らず、しゃべりの達者な人が出てきて、好きにしゃべってるように見えるこの映画が、なにを表現したがってるのかがよく分からないまま、しかしどこか心安らぐ優しい雰囲気の中で時間が進んでいった。

最後には調理風景がインタビューの間に挟まれていた料理が登場人物に振る舞われる。
サヨリをおろすときの、骨に包丁が当たる音が印象的だったし、それ以上にサヨリの切り身の上に大量のイチゴを乗せたマリネはどんな味がするのか?

そんなふうに見ていた最後の団らんと化した食事風景で、ようやく気付いた。
結局この作品で描かれているのは一期一会ということなんだろう。考えてみれば、人間と料理とは常に一期一会。一度食べたのと同じ料理とは二度と出会えない。
その一期一会をクールに過ごすか、ウェットに過ごすか、その選択は人生そのものであり、そこに正解はない。
残るのは、美味しいものを食べた後の幸福感と笑顔。それを見てるだけで幸せになれる。


静岡では一週間の限定上映なのが惜しい。