パチャママの贈りもの

静岡シネギャラリー右側で14:10の回。客入りは13人。
予告編でアンデスの風景に圧倒されて見たいと思ってたんだけど、既に上映されてることに気付かなかった。ツイッターで@artistics_nagaが静岡に見に来たというツイートを見て初めて気づいた。
気づかなかったのも道理で、「こどものまなざし」という特集上映の6作品のうちの一つに紛れていた。


南米ボリビアのウユニ塩湖から岩塩を切り出して売りに行くキャラバンに初めてついて行く男の子のロードムービー
ウユニ塩湖は100キロ×200キロ四方にわたって一面が塩という厳しい環境。しかも標高は富士山並み。このなにもない集落に生まれ育った少年が、初めてリャマと共に外に出るわけだ。



道中にはボリビアの厳しさが描かれる。同行した鉱山で働く父親を訪ねる少年には思いもよらない事実が告げられる。
瓦礫で出来た山は一足ごとに落石が起きる。日本の山だったら「ラクー」とかいちいち叫んで大騒ぎしなきゃいけないような危険を当然のことのように歩を進めて行く。ただし命を危機に晒していることには常に敏感でいる様子が伺われる。天候が崩れそうだ、という場面の雲の動きは高山のものだ。


この映画はノンフィクションではない。さまざまな計算に基づいた演出がなされている。
初めて外の集落に出た少年が、初めて外の社会と出会い、その中で初めての恋をして、初めてのキスをする、この流れが本当に美しい。
大地の神様であるパチャママの贈りものとは圧倒的な自然のことであり、その自然には当然のように人間も含まれる。ただ最近はパチャママに贈られなかった人間が増えたというだけの話なんだろう。