「息もできない」

静岡シネギャラリー左側で19:15の回。客入りは8人。


この映画はなんと言ったらいいのだろう?
内容は暴力の連鎖なんだけど、なぜかとても生温かい。自分以外への暴力だから感じられる温度かもしれない。
原題は「糞蝿」だそうだ。しかし自然の中で生き物は糞をして、その糞には蠅がたかる。それが自然だ。この映画には、人間という生き物の、ある意味自然な心の震えが残酷に描かれている。


人間には暴力と優しさと、相反した二面が存在する。その暴力面だけしか見えないのが他人であり、優しさしか見えないのが愛人であり、その両方が見えるのが家族なんだろう。
近ければ近いほど痛む心を持つ関係。ラストシーンは、まさに息もできない。


監督・脚本・主演がヤン・イクチュン。ワンマン映画のはずなのに、その臭いが全くしない。恐るべき感性とバランス。しかもこれがデビュー。
これはなんなんだろう?一種の奇跡だと言うべきだ。


この予告編がまたよく出来てるんだ。映画を見た後に何回でも見てしまう。
なぜなら、この予告編にはこの映画を見終わった後の傷に効く甘さがあるから。