ベスト・キッド

静岡ピカデリー2で19:20の回。客入りは25人ほど。


ジャッキー・チェンなのだよ、俺が見に行ったのは。
そりゃもう分かってる。ジャッキー・チェンが年をとったということは。本作でも6人の中学生相手に、かっこよくやっつけはしたけどハアハアしてたもん。でもジャッキーのアクションがそれ一つで終わりとはなー。


映画に興味のない人でも知ってるジャッキー・チェンは、映画に興味のない人は知らないだろうけど、今でも結構映画に出てる。ただ、残念ながら大々的に知られないだけで。
ジャッキーは香港の中国返還で運命を狂わされた一人だ。香港を出てハリウッド進出、しかし香港映画のやり方がハリウッドで許されず、立ち位置を見失って、なにやってんだか意味不明な迷走してた時期もあった。


やがて政治情勢の変化とともにジャッキーは「中国」に活動拠点を戻し、立ち位置を純粋なカンフーアクション俳優に戻した。しかしこの間に失ったものは大きかった。若さと信用を失った。
とはいえ、失った若さは後に再生物語において大いなる説得力となった。この魅力が最大限に発揮されているのが「香港国際警察」である。

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star良い!
starやはり舞台は香港がベター
star惨殺シーン、共感できぬ

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ジャッキー演じる衰えた老刑事を叱咤激励するシウホンの姿は、まさに俺たちジャッキーファンそのものだった。


俺はこの時にジャッキー・チェンの復活を確信した、のだが…。そうはならなかったのは迷走時代に失った信用の大きさ故だろう。
なにを今さらジャッキー・チェン。とうに終わったウッチャン似のバケモノハナ男。
たかだかこれだけの嘲笑なのに、俺には返す言葉がない。

そんなジャッキー久々の拡大公開作品がこの「ベスト・キッド」だ。
とはいえ、もはやジャッキー・チェンの名前で拡大公開する時代ではない。この映画が拡大公開された理由は2つ。
カラテ・キッド」のリメイクであること。
ウィル・スミスの息子が主演してアメリカでヒットしたこと。
ジャッキー映画が、世襲のクソ二世タレントのご威光のおかげで拡大公開されるとは!なんという屈辱!鬼畜米英!


見る前からクソ映画だと思ってたはずだったのに。
なんだ、この見終わったあとの充実感は!しかもアクション映画好きな知人を誘ってもう一回見に行こうと思ってる俺がいる。
ストーリーは全く持ってベタで、オリジナルよりひどいといってもいい。


じゃあなにがいいかといえば、悔しいけどウィル・スミスのガキなんだよ。イッチョマエにカンフーアクションをこなしやがるし、体も筋肉質で12歳としては見ごたえ充分。
そしてその師匠役のジャッキー・チェン。演技派で売ろうとしてた時期から10年以上たってこの演技。渋い。ジャッキー・チェンを鼻の大きなニヤケ男と思ってる衆を腕づくで劇場に連れて行きたい。

中途半端にブサイクで可愛い中華ヒロインといい、見え見えベタベタなハッピーエンドといい、文句のつけようはいろいろある。しかし、楽しむ力を持った観客すら裏切り続ける映画が多い中で、楽しむ力を持った観客をこれだけ楽しませる映画は残念ながら少ない。


静活では字幕板が上映されているけど、大方は吹替版で公開されていることからわかる通り、この映画のターゲット層はゆとり世代以下の世代。俺もその世代にこそ見て欲しい。けど、観客の平均年齢は50歳を越えてた。
静活が字幕板で上映したのは残念ながら正解だった。