レッドクリフ

静岡オリオン座で13:15の回。客入りは100人ほどで、平均年齢は55歳くらい。

さー来たよ、三国志。そういえば今週のビッグコミックスピリッツの「気まぐれコンセプト」に、オタクにレッドクリフのストーリーを聞いてはいけない、というネタがあった。俺も聞かれてもないけど答えちゃうよ。昔、中国に漢って国があってさ(以下略

本音を言えばマンガに描かれたように漢王朝の衰退のあたりから逐一説明したいところだけど、ここは常識人として振舞おう。
漢王朝を牛耳る曹操、はるか南過ぎて曹操に攻められない孫権、その他大勢の弱小豪族の中で珍しく曹操に逆らった劉備
その劉備曹操に惨敗して敗走、次に狙われた孫権と手を結ぶ。しかし曹操の兵力規模にはかなわない。圧倒的不利な状況の中、知恵と団結力で立ち向かう。
ここは三国志で一番おいしいエピソード。これを2部に分けて大作映画として見せてくれるのだから、嫌でも胸の高まりを抑えられない。

俺は登場人物の中で趙雲が好きでねー。趙雲好きが三国志を一番長く楽しめるんじゃないかと思う。長生きだったし。ただ趙雲好きの不満として、常に脇役扱いされてしまうことがあるのよ。
ところがこの映画じゃどうだ?主役だろ?こんなに趙雲が活躍する作品って見たことないよ。
劉備のバカ息子を命がけで救出、こんだけ延々命がけの死闘を描いてくれたら、趙雲好きとして本望だよ。
まあ、結果としてこの世襲のバカを生かせてしまったせいで蜀の国は滅亡してしまうんだけどさ。
だから俺が言ったじゃん、劉備亡き後は趙雲をトップに据えるべきだって。どうせ北朝鮮も真っ青の軍事国家なんだから100%軍人が頂点にいて、孔明が補佐すれば歴史は変わってたんだって。なんで孔明は聞いてくれなかったかなー。
とか言い出すから三国志オタクは「気まぐれコンセプト」でネタになっちゃうんだけどさ。

話は大きく脱線したけど、要するにこの映画の趙雲は素晴らしい。三国志を知らない人が見たら、劉備孔明趙雲張飛関羽の序列だと思うんじゃない?これは桃園の誓いをすっ飛ばして赤壁の戦いに特化したからこその現象。
こんな感じで微妙に史実とは違う点はあるんだけど、考えてみれば三国志オタクが史実だと(わざと)勘違いしてる三国演戯こそ史実と違うわけで。

史実と違うのはそういう理由でいいとして、問題は大作の割りにエキストラの質が悪く、そのせいでリアリティがないこと。他のところは全然問題ないのに。
中国の映画なりドラマなりって、膨大な人口と安い人件費を背景にした無駄とも思える気の遠くなるような人海戦術が魅力だったのに。しかし趙雲を延々おいかけたり、個人戦が続いたり、エキストラを使いまわして大きく見せようというセコイ技術を隠す技術がなくて、一言で言うとしょぼい。その少ないエキストラも戦ってる風ではなくて、指示されて移動してるようにしか見えない場面やら、やる気のない奴やら下手すりゃかったるそうな顔してる奴がいる始末。
それでなくても殺される絵が欲しいために、普通突っ込まないようなところに突っ込んで行って死ぬ奴が多すぎなんだよ。

一方でCGなんかは本当によく出来てる。だから映画としてのバランスがどこかおかしい。右脳が満足して左脳が納得しない、そんな感じ。

つーことで前編は陸戦で曹操を破り、水軍戦にそなえて対峙するところまで。
いやはや、ここからが真骨頂だし、この出来なら後編だけ見ても十分面白いはず。ここから先は史実が素晴らしいし、その上に乗る三国演戯のフィクションは芸術といってもいいもの。
つーかここまでの話でこれだけの映画が作れれば上出来の部類だと思う。

金城武孔明はどうなんだろうね。思ったより可もなく不可もなくという感じ。もうちょっと賛否どっちかに振れると思ったんだけど。