レッドクリフ2〜勇気と死体の延長にある今この時を生きるために必見

日比谷日劇1で11:15から前後編通しの「イッキ見」の企画。
ジョン・ウー監督の舞台挨拶つきなのに客入りは700人ほどか、やや空席あり。

三国志を知らなくても、前作を見ていなくても、まったく問題がないように前編とは別作品のように作られている。また、極めて単純化された(ために魏や曹操びいきの人には反発必至の)分かりやすい案内もあるので初見でもOK。


前作の時も書いたとおり、俺は三国志が大好きで、登場人物の中では趙雲が好き。
前作に引き続き大満足のいく内容だった。三国志を知らない人がこの映画を見たら、蜀の序列は孔明趙雲劉備張飛の順で、関羽なんか完全な脇役だもんなー。
一度赤壁から撤退したあとに、真っ先に赤壁に向けて立ち上がるなんざ、義に堅い軍人の魅力爆発。

一応は前編後編の2部作ということで作られているんだけど、実際のところこの後編は前編とは趣を異にする。
三国志自体が壮大なスケールの歴史劇で、しかもこの赤壁の戦いは魅力的な出来事が凝縮した最大の山場。黄蓋が自ら望んで鞭打たれて偽装投降したり、孔明周瑜が戦法を互いに「火」と書いて見せ合う場面とかもないし、連環の計だって曹操軍で勝手にやっちゃう。


これは舞台挨拶でジョン・ウー監督が言ってたこと、史実よりも現代を投影する内容にすることを優先したためのこと。
どういうことかっつーと、これが前編との大きな違いでもあるんだけど、一人一人の行動つーか人間が具体的に描かれている。


ともすれば「戦いで大勢の人が死にました」で終わってしまう歴史上の出来事が、無名の一人一人の痛みと勇気と希望の積み重ねなんだ、ってことを嫌でも意識させられるんだ。
ひいては同じ歴史の時間軸の上に立つ俺たちの喉元にも、どう生きるべきか、という刃を突きつけてくる、極めてメッセージ性の高い内容になってる。
だからこそ、今までいろいろ見てきた三国志の中で、人物が一番人間らしかった。


もちろん金城武孔明もいいんだけど、立場と役柄上やむを得ないとはいえ、戦場を離れてるがために本作のテーマからは浮いた形になってしまった。



英雄物語としてではなく、人間物語としての三国志
これは俺と三国志を引き合わせたNHKの「人形劇・三国志」で紳介・竜助の紳々・竜々が表した特徴的な立場だった。
だから「人形劇・三国志」から三国志に入った世代の俺としては、どこか懐かしい気持ちにさえなれたんだろう。
前編で、人が死ぬのを描きたいがために、わざわざ無駄死にするような場面があったのとは大違いだ。


もう一つ前編との違いをあげると、周瑜の奥さんの小喬孫権の妹の孫尚香の活躍。これは現代社会における女性の台頭を念頭に置いたそうだけど、ちょっとやりすぎ感は否めない。
ベッキー似で印象に残る孫尚香役のヴィッキー・チャオって、よその評論ではあまり触れられてないけど「少林サッカー」の女の子だよ。私生活でも暴行事件とか起こしたり、こういう役にハマリ役ではあるんだけどね。
ただ、活躍がリアリティを欠く方向に傾きすぎたのが惜しい。つーかハマリ過ぎなんだよ。


ところどころそんな感じのツッコミどころがあるとはいえ、日劇の特大のスクリーンであの赤壁炎上を見せられたら、もうなにも言えなくなる。
幸いなことに静岡だとオリオン座で上映されるので、このスクリーン映えする映像をぜひ映画館で見て欲しいなぁ。


しかし、ほぼ同規模の日劇1で見ながらオリオン座だとどうなんだろう、って考えてたんだけど、残念ながらオリオン座は音響は滅茶苦茶だよね。音が割れたりすることもあるし、サラウンドだっつったって、離れたスピーカーから音が出てます的な不自然さ丸出しだし。
でも地方で日劇1と比較するレベルのワガママを言えるなんざ、奇跡つってもいいんだけどさ。