静岡銀幕週報32




───────────────────────

┏━┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

┃N┃■┃作品レビュー

┣━╋━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

┃■┃クワイエットルームにようこそ

┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



「生きることとは壊れること」



静岡シネギャラリー右側で12月11日の15:15の回。

客入りは30人ほどと結構な入り。



今年の邦画はクソ揃いだと思ってきたけど、最後の最後に傑作が来た。

そして怖い、原作はあっさり読んだのでそう思わなかったんだけど。



睡眠薬とアルコールの過剰摂取で精神病院の閉鎖病棟に運ばれた女性ライター。

たまたま飲みすぎたのは事故であって精神は病んでいない、と思ってる。周りは

明らかにおかしい人だらけ。彼女らとの交流を通じて芽生えてきた感覚に

面会に来た彼氏が火をつける。



10年近く前に取ったホームヘルパー3級の実習でケアセンター瀬名の閉鎖病棟

行ったことがあって、その2日間を思い出した。1日中ぐるぐる回ってるおばあちゃん、

1日中息子を探してるおばあちゃん、勝手に体が動くから拘束してくれって訴えるおばあちゃん・・・。

患者の中にまともなおじいちゃんがいて、でも実はその人も壊れてたことに最後に気づかされた一言は

一生忘れられない。最後の最後に

「あんた、チュウタイはどこだ?」

って言われたもんね。チュウタイって分からなかったもん。留年はしてるけど中退せずに大学は卒業したし。

まさか兵隊の所属(中隊)を聞かれてるとは思わなかった。あの瞬間に聞こえた自分の激しい鼓動と呼吸、

ミキがトイレで拒食を正当化した後の佐倉の息遣い、まさにそのものだった。



人間誰だって、どっか壊れてる・他人に理解出来ない部分って多かれ少なかれあるじゃん。

もっと壊れてる人は外の世界にいくらでもいる。主人公の佐倉より彼氏の鉄ちゃんの方が

よっぽどタチの悪い壊れ方をしてるんじゃねーの?

薬の飲みすぎも酒の飲みすぎも止められないのは一緒、違うのは薬が俺の手元にないだけ。

あったらどうなるか、分からない。

壁の向こうとこちら、違うのは与えられた環境、そしてその結果としての行動が目立たないこと、

異常に思う人が周りにいないこと。

無意識下の胃洗浄が苦しくて「死にたい」って言ったのが「自殺願望」の決定打になってしまうような

コミュニケーションギャップの恐ろしさも本作では上手く描かれている。



閉鎖病棟とこちらの世界の壁なんてのは、最初に出て来たコメディアンが破裂させた風船と一緒。

ふとしたことで膨らんで壁は弾ける。

普段はメンヘラはうざいから頑張って死ねとか思ってるけど、そのメンヘラと自分との境目が

分からなくなってきて不安にさせるほど心を動かす作品だった。



ある面ポジティブで明るい雰囲気の映画なんだけど

ちょうど実習帰りのあの夕方のように呆然として帰宅した。





11月21日まで

静岡シネギャラリー





┏━┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

┃R┃■┃来週なに見ようかな

┣━╋━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

┃■┃「サルバドールの朝」「カンナさん大成功です」「アイアムレジェンド」

┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

「アイアムレジェンド」は前倒しで今日金曜日公開。

これは原作が有名な古典SF。安っぽいホラー映画にも高尚な哲学作品にも作れる内容だけど

そういう要素をスタイリッシュっぽい雰囲気にどれだけ盛り込めるか。

「カンナさん大成功です」は久々に拡大公開される韓国映画。原作は日本の少女コミック

ブコメなら日本より韓国のほうが一日の長がある。評判もいいし楽しみ。静岡ではミラノ1。

たまごっちのアニメとペンギンのアニメはパス、シンプソンズもあるのか。冬休みの子供目当ての

アニメも今年は大きな目玉がないから下手な鉄砲も数打ちゃ当たるという様相を呈してきた。

東宝邦画の「スマイル 聖夜の奇跡」もどうでもいいだろ。

あと前作が意味なく盛り上がった「ナショナルトレジャー リンカーン暗殺者の日記」は

来週木曜夜からの公開。

個人的には先週からの課題「サルバドールの朝」も。







┏━┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

┃Z┃■┃雑記

┣━╋━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

┃■┃ウィークリーまぐまぐ

┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

2008年1月に上映している映画のお勧めレビューを175字で、という依頼が

ウィークリーまぐまぐからあった。19日締め切りで1月4日発行分に掲載とのこと。

俺さー業界関係者でもないし、単館向け作品が月遅れ公開される地方在住だし、

「アイアムレジェンド」か「カンナさん大成功です」しか候補がないんだけど。

どっちもイマイチだったら、生まれて初めて頼まれた原稿をお断りすることになるかも。

でもお断りできるから気が楽でいい。

昨日書いた出産祝いの色紙は、気が乗らなかったけど断るわけにはいかなかったもんなー。





▽発行 RRD ◆3MranranlY

▽ブログ http://rrd.blog.shinobi.jp/

▽購読登録・変更・解除はこちら→ http://www.mag2.com/m/0000227749.htm





◎静岡銀幕週報

 のバックナンバー・配信停止はこちら

http://blog.mag2.com/m/log/0000227749/