伊勢神宮の真ん中で「ええじゃないか」と叫ばない・熊野2泊3日

俺の旅ってのはいつも大雑把。特に最初の予定の大雑把さは半端じゃない。
今回だってそう。青春18きっぷを使って、朝に静岡を出て伊勢神宮を外宮、内宮参拝して、熊野でめはり寿司食って、速玉大社、那智大社熊野古道を踏破して本宮経由で紀伊田辺まで歩いて、潮岬で地球の丸さを感じて、白浜の温泉に浸かって砂浜を楽しんで、南部の次の岩代駅でテングサと踊って、和歌山に抜けてラーメン食って、時間があれば奈良・飛鳥あたりを散策して、ついでに彦根ひこにゃんに会ってくる、これを一泊二日で、ってんだからどうにかしてる。
落語の「薮入り」で大阪まで連れまわそうとする親父と大して変わらない。


そしてもうひとつの問題があって、大雑把な旅を支えてくれる予約なしで泊まれるサウナや健康ランド紀伊半島には全くないということ。宿の相場自体は安いんだけど、数が少ないからちょっとすると埋まっちゃう。本来は一週早く旅するはずだったんだけど、お盆の時期とあって宿が取れない。
場合によっては10数年ぶりに駅ネとか、ネットカフェ難民になるという選択肢もあったけど、風呂に入りたい、携帯やネットブックに充電したい、ということから紀伊勝浦に2500円の民宿を見つけて予約した。


21時までに紀伊勝浦にたどり着かなきゃいけないという、この閉塞感!なんという不自由!多大なるプレッシャーとともに旅立った。




静岡駅始発の浜松行きから特別快速大垣行きを名古屋で降りて、四日市行き、亀山行きと乗り継いで、亀山へ。特に亀山に用があるわけじゃないけど、乗り換えの都合で30分ほど時間がある。東海道亀山宿は歩いてすぐ。
静岡の島田にある川越遺跡もそうなんだけど、道がそのままの形で残ってる、それだけで十分遺跡だ。


亀山から松阪行きを津で降りて快速みえで伊勢市に着いたのが11:02。紀伊勝浦の21:00のチェックインに間に合うためには14:53がタイムリミットだと判明。滞在時間3:50。
まあ神社二つだし、こんなもんだろう、と。


いやー、ところがな、お伊勢さん、すげーわ。
いや、伊勢神宮自体はそんなたいしたことがない。
外宮と内宮とに分かれてて、太陽信仰に端を発し自然崇拝にふさわしい環境ではあるけど、権威を持たせようと人為的に必死になってるようにしか見えず、興ざめの部分が多かった。

まあ、これは宗教だから、なにか感じる人はそれはそれでいいと思うし否定はしない。ただこれが日本人の心のふるさととか言われると、それはどうなのかねえ?と思うけど。


もともとは伊勢神宮の真ん中で「ええじゃないか」と叫ぼうという企画だったものの、事前調査のとおり「ええじゃないか」と伊勢神宮はあまり関係がないらしいので叫ばなかった。
http://d.hatena.ne.jp/RRD/20090814/1250264181
それにそんな雰囲気じゃないし。


じゃなにがすごいのかというと、伊勢神宮にかける門前町の思い。
おはらい町通り、もちろん江戸時代のおかげ参りのまんま残ってるわけじゃないんだろうけど、その雰囲気を残そうという思い、そしてその時代から残ってる店をそのまま残していこうという思い、そしてそこからおかげ横丁という新しい一帯を作って、守るだけではなく新しい伝統を作っていこうという思い、これは本当に尊い


つーか、小林よしのりゴーマニズム宣言を読んでた関係でおかげ横丁を過大評価し過ぎて、おはらい町がこんなことになってるなんて想像できなかった、つーか、おかげ横丁で時間とりすぎた。

酒蔵でその場で飲めるようになってたり、梅酒美味かった。五十鈴川沿いの赤福で赤服食いながらお茶も飲みたかったけど、なにせ滞在時間3時間50分。


おかげ横丁もいいんだ。それ自体が無料のテーマパークだし、おかげ座という芝居小屋を模した博物館みたいのがあって300円で中に入るとこんなジオラマ

遊郭ってさ、吉原にも行ったことがあるけど、今じゃくすんだソープランド街じゃん。落語の廓話で聞いてた遊郭ってこんな感じ?とか、クオリティ高いよ。


さて、俺の旅はフリーダムで格安な一方で、リーズナブルに名物を、というのも大切。友達から松坂牛の牛丼という話を仕入れて、こりゃいいやと行ってみたんだけど、聞いた店は「ステーキ牛丼」と称して2000円からする。
こりゃ手が出ない、と思ってたらおはらい町通りの端っこでこんな店を発見。600円だよ。

もちろん吉野家に比べれば安くはないけど、脂は軽いし、牛肉の旨みで構成された牛丼はなかなか印象に残る味だった。


もっともっといたかった。紀伊勝浦の宿を予約してなければ、ぎりぎりまで伊勢にいて、四日市まで戻ってユーユー会館に泊まってただろうに。
けどしょうがないから歩いて伊勢市駅まで戻って多気で新宮行き。


尾鷲。降水量が多いってのが車窓からよく分かる。この屋根、そしてシダ類が多い感じ、ちょっと緑の色合いがよその地域と違う。

ああ、俺、空いてるディーゼルカーで山道を行くんなら、延々とどこまででも行けるわ。
たとえば17時とか18時とか、都会ではラッシュなんだろうけど、ここはなにもないよ。まったりと夕暮れが過ぎていく。



紀伊勝浦19:34着。間違って海側の出口から探したため遠回り、チェックインは20:30。

半島ひとつをホテル浦島が持ってて巨大ホテル、湾の中の島をホテル中の島が持ってて巨大ホテル。知らずに夜景だけ見ると豪華客船が何隻も停泊してるように見えた。