ハゲタカ〜よく出来てはいるけどNHKと東宝にはこれが限界

静岡東宝6階で20:05の回。チケット売り場は行列で、「ルーキーズ」「ルーキーズ」の声の中にちらほらと「ハゲタカ」の声も聞かれ、上映開始時には50人ほどと上々の客入り。

NHKのドラマも好評だったみたいだけど、映画はリーマン破綻などの最新の経済情勢を織り込んで原作改変があってどうなることやら、とやや不安に思ってた。
ネタが経済だから「TOBってなに?」レベルで聞かれちゃうとお手上げになっちゃうけど、TOBがなにかレベルのことが分かってれば全然問題ない。じゃあ説明調なのか、というと決してそういうわけではない。至って自然にわかりやすい。


その一方で、映画的な伏線というか仕掛けのようなものが張り巡らされている。そこから暗示されていることをどれだけ読み取れるか。そこに気がつけば気がつくほど面白いし、気がつかなければそれはそれで問題ないし、2段階定額制みたいな造りになってる。


登場人物全員が2ちゃんねるで批判されるような人たちなんだけど、それぞれがそれぞれの立場と人生での必死の選択の結果。一見悪人や落ち度があるように見えて、実は悪人もいないし、誰にも一方的に責められるべき落ち度がない、日本人に関しては。そこがこの映画を見ていて辛いところなんだよなー。
もちろん責められるべき部分はそれぞれにあるんだよ。


玉山鉄二は屈折した難しい役どころをうまく演じたと思う。
映画の登場人物に対する印象って、設定とかセリフとか行動で決まるもんじゃなくて、雰囲気で決まるものだと思う。
玉山鉄二の演じた劉一華は、善意の人なんだか悪意の人なんだか、最後までよく分からなかった。設定だけで見ればどう見ても悪意の人だし、セリフとか行動とかは善意の人で、要するに悪意を実現するために善意を装う人物なんだけど、その両方があるから善意だか悪意だか分からないんじゃなくて、その持ってる雰囲気が常に変わらずつかみ所がない。


派遣労働者問題の扱い方は紋切り型でイマイチ良くなかったものの、メインのストーリーに組み込むパーツとしてはあれで精一杯なんだろう。うまく組み込みましたね、とは思える。
もっとも派遣労働者問題はそれ一つで映画のテーマになるべきものだし、あれ以上やると「ハゲタカ」の本筋を食っちゃうだろうし、あれ以上をやろうと思ってもNHK東宝じゃ無理でしょ。そんなの、最初から期待してない。
下手すれば噴飯モノの存在になりかねなかった派遣工役を演じた高良健吾トラックバックで指摘もらいましたので訂正します。つーか男優の名前間違いはしょっちゅう指摘もらうけど、ハッキリ言って男の名前なんかどうでもいいんだ、ヤれるわけじゃないし。つーか女優だってヤれないけどさw)も良かったよ。ムダにカッコよすぎたけど。


でももう少し、工場での仕事を描くべきだったとも思う。
この映画の本質は鷲津政彦の、現場では1円でも削ってるのに経営が下手打って何十億も損失出しやがって、というようなセリフにあるはずだから。
でもそれはNHK東宝には無理かな。

こんな国に誰がした
なんのために戦うのか
なんのために働くのか
日本人が見失いかけている答えがここに

ないと思うよ。NHK東宝には無理だよ。