ヒトラーの贋札

「”生か死か”の先にあるものを見よ」



3月25日 シネギャラリー右側で14:40の回。

アカデミー賞効果で30人ほどの入り。



ここのところ、俺が見たドイツ映画は良作が続いているので期待していた。

ユダヤ人の贋札作りのプロがナチス強制収容所で贋札作りに携わる。出来のいい贋札を作れなければ銃殺、しかし贋札を作れば連合国の経済が混乱し、ナチス支配が続いてしまう。



DEAD or ALIVE。生か死か。映画のフレーズとしてもよく聞くこの言葉が使われるのは生死が確定していない状況。見据えているのは生死の決まるその場面。

しかしこの映画では生であろうが死であろうが、そこにあるのは絶望であることだけが確定している世界が描かれている。生きていればどうにかなるのか、死して残るものがあるのか、見据えているのは生死の先だ。



これは歴史上の場面での葛藤した選択の物語ではなく、葛藤して得た選択と葛藤して得た選択との間の葛藤の物語である。しかもその両者は明らかに力関係が対等ではない。これが対等であったなら、必死にそれぞれの選択にしがみついたところだろう。このバランスの悪さが葛藤する人間の姿を引き出していた。



もうひとつ、最近ビジネス書でリーダー論とか人心掌握術みたいな本が売れてるのが目に付くし、労務管理セミナーみたいのが盛んだけど、その小手先のテクニックの末路が少佐の座りションベンだったりするわけで。

程度の差こそあれ、強制収容所の贋札工場の根本的な構造は、不況下の資本主義社会そのものだったり。