ラビ・バトラ序説
http://d.hatena.ne.jp/RRD/20081213/p1で触れたラビ・バトラについて、簡潔にまとまった記述がネットには見当たらないので書いてみる。
ラビ・バトラ Ravi Batra
経済学者・サザン・メソジスト大学教授
1943年インド生まれ
インド・テリー大学卒業、アメリカ・イリノイ大学で博士号
俺がラビ・バトラの存在を知ったのはいつだったか、記憶に定かではない。
サブカルとか、アンダーグラウンド的なものとか、頭のおかしい人とかに興味があって、いろんなものを見たり聞いたり読んだりしているうちに出会ったんだろうと思う。
正直言って2-3年前まで、俺もこの人は頭がおかしい、いっちゃった学者だと思ってた。
経済学者だけど、普通の経済学者じゃない。
当たると怪しげに謳う予言の数々。
1978年に発表
- ソ連は1990年頃に崩壊
- 1979年にイランで革命が起こり、聖職者が支配
- 1980年からイランとアメリカが戦争
- 2010年頃にアメリカのマネー支配、資本主義の独占が終焉
- 女性の社会進出
- マネーの原則がグローバルスタンダードに
1980年代前半に発表
- アメリカは1983年から89年に繁栄
- ヨーロッパは1986年に深刻な不況
- 1989年から90年に株価暴落、以後7年の不況
- 世界的な企業合併が増大
- 1983年から89年に記録的な株価
- マネーのルールは終り、伝統的な価値の復活
1988年から92年に発表
1990年代後半に発表
どうだろうか。
そりゃ予言じゃなくて当然だろ、とツッコミたくなるところ、そんなあいまいな言い回しで、あとから当たった当たった言われても、というところ、いろいろある。
でもな、この人、神からご神託を預かる預言者じゃないのよ。経済を推測して未来を予想する予言者なの。
経済学者の予測としては上出来な部類なんじゃないの?
最近の予言の内容は、露骨な資本主義の終焉。
著書の経済書の中にはスピリチュアルな記述が散見する。例えばこんな感じ。
来年何が起きるのか、をスタッフに尋ねられ、急激な変化ではない、とバトラが言葉を濁す。
どうしても聞き出したいスタッフと押し問答の後。
押し問答のさなか、頭の隅をキラっと光がよぎった。
今朝、瞑想で出会ったエイシアント・ソウル(古代の魂)だ。サーカー師の姿で現れた、いにしえからの声だ。
(自分の頭で判断するのだ、バトラ…)
中略
言うなら今だ!ためらうべきではない。明日では遅すぎるのだ。
文体は完全なオカルト本である。
しかし、こうなるのにはそれなりの理由がある。
バトラの経済学は普通の経済学ではない。バトラが師と仰ぐP.R.サーカーの哲学に基づいた経済学だからだ。
P.R.サーカーは哲学者である、ということになっているが、実際はヒンズー教の宗教者という方が近いようだ。ただ、この人も普通の宗教者とは違って、宗教に基づいた哲学理論を構成した。
そして、その哲学に基づいた経済学を作っているのがラビ・バトラである。
そんなこともあって、いわゆるニューエイジムーブメントとの縁は切っても切り離せないし、だからこそ注目されていると言う面もある。俺もそっち方面からのアプローチで出会ったわけで。
心理学と経済学が結びついて行動経済学が生まれたように、東洋哲学と経済学が結びついて、新たな経済学が生まれようとしているようだ。
哲学と経済学の結びつきで言えば、西洋哲学と経済学を結びつけ、新たな経済学を生み出した男が存在した。
「経済学・哲学草稿」→「資本論」、マルクス経済学を生み出したマルクスである。
ラビ・バトラから始まる経済学の潮流は、いずれ資本主義でも共産主義でもない、新たな経済体制を生み出す可能性がある。既にバトラは「プラウト経済」を提唱している。
このプラウト経済には幾多の批判はあるのだが、マルクスだって一人で共産主義を作ったわけじゃない。プラウト経済も、まだまだ芽を吹いただけの段階。
「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に送られるイグノーベル賞を受賞したこともあった。
「資本主義は消滅する」と言い続ける自分を「それでも地球は回っている」と言ったガリレオになぞらえたりもした。
しかし、いまようやく陽の目を浴びようとしている。
ではバトラは最近、具体的にどのような予言をしたのか、それは当たったのか、その先にある予想はどうなっているのか。
次回からその著書をもとに検証してみたい。
ラビ・バトラ購読・第1講に続く。