剱岳 点の記〜登山史上に残る尻つぼみ

静岡ピカデリーZEROで13:10の回。客入りは200人弱と、びっくりするほどの大賑わい。


今日は日中ちょっと暑くて、冷房の効いた映画館で、雪山を登る映画って、時期ハズレが逆に心地いい感じ。日本映画の雪のシーンって全然寒さが伝わらない、雪降ってるのに誰も寒がってない、雪の中転げまわって暖かさすら感じるような映画が多いのに、これは十分に寒さ・辛さが伝わってくるよ。
でも最後の方は内容としてちょっと寒かった感じもしたけど。

浅野忠信香川照之が↑この三角点をたてるために苦労して下調べして、準備して、試行錯誤を繰り返してさ。その過程で描かれる山の情景がダイナミックで素晴らしい。こんなの、テレビじゃ体感できないよ。行ったことないけど、その場にいるって感じ。

俺の大好きな香川照之が大活躍。
この人は狂った日本兵とかを演じさせると天下一品で、今回は陸軍の測量部隊の話ということで狂った軍人の役を大いに期待したら、純朴な地元の案内人の役。そしてちゃんとハマってる、つーか、完全に主役の浅野忠信食ってたでしょ。


この香川照之の息子が剱岳に人が踏み入れることに反対してるわけ。そんな親子ドラマもあって、息子が父親を理解して和解するだけだけなら陳腐な話だよ。
だから雪渓を越えて、それまで5人ロープでつないだ先頭で案内してきた香川照之がロープをほどいて、ここから先はあなたが先に行ってください、って言った時は、やったやった来た来た!と思ったね。剱岳に登らせる気がないんだ、と。


ところがそういう意味じゃなかったんだな。裏方だから初登頂の栄誉を譲ろうとしただけだったんだよ。
なんだよ、くだらねえ。つーか、あの親子の因縁は何で突然解決したのか、よく分からん。
まあ、勝手な期待をした俺がくだらねえと思っただけで、ここは映画としては非常に重要なテーマを描いていて、要するに誰が偉いとかとかじゃなくて、みんな対等な仲間なんだと。
その精神はエンドロールに如実に表れていて、役者もスタッフも全員肩書きなし。「仲間たち」の下に名前が並んでいく、ただ一人、原作の新田次郎を除いて。



しかもだよ。
苦労に苦労を重ねて、さあこれからどうやってクライマックスを迎えるのかな、と思った瞬間にストップモーション。次の瞬間には山頂で呆然としてる。
見てるこっちが呆然とするっつーの。
確かに雪渓を登るっつーのは危険だよ。毎年のように何でもないときに、観光地と言ってもいい白馬の大雪渓で事故が起きてるしな。その危なさも伏線として描かれてはいるんだけどさ。でもあれだけあっさり登られたら、リアルなのかもしれないけど、もっと描き方ってモノがあるでしょ。

ハッピーエンドで終わって、映画全体として満足はいったものの、なんかモヤっとしたフラストレーションみたいのが残った。
中盤あたりぐらいまでの説得力がハンパない反動なんだろうけど、リアルに頼りすぎて映画としてまとめ切れなかった、という感じ。