リアル・スティール
ネタバレして結論から言うと、この年末年始に映画を観るなら「リアル・スティール」を観なさい、という話なんだけど。
まず、予告編を観なさい。
どうよ?出し惜しみ一切なし。この予告編にないのはラストバトルの勝敗のみ。
この映画のすごいのはベタなストーリーじゃないから書くけど、要は近未来に人間による格闘技の刺激に飽きた人間が、敗者は破壊される残虐なロボット格闘技に夢中になってるわけだ。
そのヒュー・ジャックマンは元は有望なボクサーで、今は底辺でドサ回りしてるロボットのプレイヤーのダメ親父。
離婚した元妻が死んで、息子の親権を元妻の妹に売り飛ばすクズ。
もっとも元妻の妹の金持ちの夫もバカンスに行きたいからってクズに息子を預けるクズだよなー。
そんなクズだらけの男の中で、女心をくすぐるのが、こどもアメリカ支店長とも言うべき、この息子なわけよ。ロボット格闘技の大ファンで、ゲーム大好き。
で、このダメ親父はバカのイケイケドンドンで、なんにも考えずにロボットを買って、なんも考えずに戦ってるわけ。これを見て何とかしたいと思ってた息子が、親父と盗みに入ったロボット処分場で一台のロボットを発掘するんだけど、これがいい場面なんだ。
土砂降りの雨の中、滑って死にそうな息子を助けだすヒュー・ジャックマンとの絆とか、一人でロボットを掘り出して運び出す息子の行動力とか、それを反対したけどずっと待ってるヒュー・ジャックマンとかあって、息子が追いついてヒュー・ジャックマンをポカポカ叩いてる場面なんか久々に見る名シーンだと思うけどねえ。
その掘り出したロボット自体は旧型のスパーリング専用ロボットで、価値は全然ないんだけど、スパーリング専用というところがミソで、これが最後には打たれ強くて、打たれても打たれても立ち上がってくる涙の展開につながるわけよ。
親父は借金重ねて過去の栄光ロボットを手に入れて、無謀な戦いで惨敗する中、息子はドサ回りで頭角を表していくんだけど、このあたりも実に良くて。
ドサ回りのドサとは佐渡のような遠隔地という意味合いだけど、ロボット格闘技のドサはzoo動物園と呼ばれていて、観客も80年代のパンクというか、そんな雰囲気。その王様のように振舞ってたヤツのロボットを撃破するところからのサクセスストーリー。
最後には大舞台で大金持ちが抱えるアジア技術者の最強ロボットと対するわけで、以上が予告編の内容。
もう一回予告編、見ておくかい?
やべえ、また泣けてきちゃったな。
予告編は前後関係を無視してる部分があるけど、最終的には自動的にプログラムした攻撃が効かなくなって、親父がマニュアル操作で頑張るわけだよ。
いろんな見方が出来ると思うんだ。
俺もプロレスが好きだったし、格闘技的な視点で言えば、人間のできることには限度があるだろうし、その限度を超えてるように見えるときには実はどうなのよ、っていう。
「紙のプロレス」誌の山口昇はそれをファミコンプロレスと表現したけどね。ロボット格闘技はまさにファミコンプロレスの極地なわけよ。
格闘技ならそれでもファイターだけがバカ見るだけだけど、例えば政治とか。大衆の過剰な欲求を満たしたところになにがあるのかってのは同じ事だと思うよ。
俺は格闘技に限らず興行というものが好きだけど、華やかな光の大舞台を支えているのは陰のドサなわけで。ドサの本質をこれだけ顕著に表している映像もないと思うよ。この辺の事情って洋の東西を問わないのかなー?
あと、たとえばロボットを中心としたSFを視点にすれば、とか、いや親子愛がどうしたとか、ロボットを通じて描かれる日本とか、とにかくどの視点から見ても完成度が高いんだよ。
もう一回予告編、見るか?つーか見ろ。