万引は99%以上成功する

今年の犯罪白書が発表されたけど、webに反映されるのには時間がかかるようだ。たまたま今

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090827/crm0908270837001-n1.htm

なんてニュースで取り上げられていた

万引に関する調査研究報告書
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/manbiki/manbiki_chosa.pdf

を読んでるんだけど、これがなかなか面白い。


この概略はニュースでは主に、高齢者の万引の理由は「孤独」であること、防犯カメラより店員の声がけの防犯効果が圧倒的に高いこと、なんかが取り上げられてた。
それ以外の目に付く結果を指摘しておく。俺もチンケな事件の裁判傍聴をずいぶんしてるけど、傍聴席から感じる感覚とだいたいマッチしてる部分が多い。ただ、これ全然違うだろ、ってところもあるなー。


1)高齢者で犯歴・非行歴のない人が多い
成人だと60.8%が犯歴があるのに対して、高齢者だと55.9%しか犯歴がない。
高齢者は長く生きてるんだから、そのぶん犯歴が多くて当然なのに。いまの成人は高齢者よりタチが悪いか、無辜の高齢者が犯罪に追い込まれているか。


2)独身者が多い。
一般成人の有配偶者率は53.2%、一般高齢者の有配偶者率は59.2%なのに対して、万引犯の有配偶者率はそれぞれ25.6%、44.6%。
もっともこれは年齢分布も考慮しなきゃいけない部分がある(つまり万引犯が多い若年層はもともと有配偶者率が低い)。


3)無職率が笑えるほど高い。
成人で64.6%が無職。国勢調査の平成17年の無職率が7.6%だそうだ。
ただし成人の無収入率は52.9%にとどまる。この差の12ポイントほどはニートとかそんなんだろう。


4)高齢者の被害総額は大半が1000円以下
少年・成年の被害総額は1000円から5000円が最も多いのに対して、高齢者は54.4%が1000円以下。


5)少年の3分の1が共犯あり、成年・高齢者はほぼ単独犯
成年・高齢者の単独犯率が98%を超える数字になってる。窃盗団みたいのの印象が強いから意外な数字。
ただ、少年でも小学生の共犯率は18.9%と群を抜いて低く、中学生が急に高くなり、以降少なくなっていく。
小学生は目覚めの早い個人が背伸びをするような感じ、中学生は仲間内で、って感じなんだろうか。


6)犯行の店や時間は理由なし
特に高齢者の「理由なし」が多い。多分、なんにも考えてない。


7)少年の半分は捕まると思ってない
捕まると思ってなかったのは少年の46.2%、成人だと22.2%、高齢者だと24.3%。
坊やだから大人ナメてるんだな。


8)初犯で捕まっても屁の河童
どの世代も初犯での処分は「軽かった」「なんとも思わない」が過半数
そりゃそうだろ。大半は微罪処分といって、警察の犯歴データベースに載せるだけ送検されずに放免になるもん。


9)万引が発覚して警察に通報される確率は21.5%
バレてない余罪の数と、バレたけど警察に通報されなかった数から計算されている。

ただ、これはあくまで警察に捕まった、頭の足りない万引犯の数字。しかもいくら頭が足りないからといってバレてない余罪の数なんか正直に答えてるわけがねえだろwww

警察の発表をそのまま信じると全国の万引検挙件数は年10万件、警視庁はこの5倍の万引が発生してるって言いたいんだろ?
平均被害額6,000円(被害額データから推測)

として被害総額30億円しか全国で万引は発生してないわけだw

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20091024k0000e040052000c.html

実数はさらに20倍とするなら、警察に通報される確率は20分の1、1%ってことだ。つまり万引の成功率は99%。これは痴呆老人とか知的障害がある人を含めての数字だから、ある程度知恵のある人にとっては以下略。


この数字は実体験からも納得できる。といっても実体験とは万引の体験じゃなくて裁判傍聴の体験。
刑務所から出所して、生活の当てもなくて食料品の万引で生計を立ててる衆、たいてい捕まるのは2-3ヶ月たってから。1日1回万引したとして、100回弱に1回の割りで捕まってる勘定だ。


つーことは、逆に言うと

「万引をして見つからなかったことがあるか」に対して「ない」とか「1回」とか答えてる衆は、その1%をたまたま1回目とか2回目の万引で引いちゃった人たちなわけだw その割りに数が多すぎないか?
嘘つきは泥棒の始まり始まり、つーけどさ、ああ、もう泥棒だったかwww



10)「立ち直りたい」が過半数なのは少年だけ、高齢者の1割は「どうなっても構わない」

本文では「各年代とも「努力して立ち直りたい」の割合が最も多い」とかまとめてるけど、高齢者の9.7%が「どうなっても構わない」って答えてるのは無視ですか、ああそうですか。
でも実際は9.7%どころじゃないような気がする。特に常習累犯窃盗は、捕まるまではシャバで一時暮らし、捕まったら刑務所で本暮らしって感じの人が少なくない。


一昨日も5円しか入ってない賽銭箱を探ってる最中に捕まった、前科何犯だか忘れたけど高齢者に懲役6月の実刑判決が出てた。
引馬満里子裁判官の説諭も、これから寒くなるから刑務所でしのいで、暖かくなったら出所して生活を立て直してください、みたいな感じだったし。
この手の事件は見てて辛いものがある。無一文でなすすべなく食料品の窃盗で生計を立てていて、ビールと刺身を盗んだところを捕まった事件とか。ビールは嗜好品だから犯情が悪い、とか本間敏広裁判官に言われたりして。そういう問題じゃないと思うが。
せめて誰もが1日1本、ビールを飲めるような生活を保障できる国にしようよ。それが憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」ってもんじゃねーのか?


ビールといえば俺が好きな映画に「ショーシャンクの空に」ってのがある。


知恵者のアンディが看守に税金対策のアドバイスをする、その見返りにアンディが求めたのは、炎天下の屋根の上で作業をしている仲間たちにビールを振舞うこと。このビールがまた美味そうでさ。

ショーシャンクの空に [DVD]
ショーシャンクの空に [DVD]
おすすめ平均
stars人によって価値観は違うが
stars絶対購入の映画
stars生きること 希望とは
stars4回見てもまだ飽きない
stars苦境でも希望を捨てない

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

だけどいま、日本の知恵者どもは自分たちだけ集まって銀座とか代官山とか広尾とかでドンペリ開けたりしてるんだろ。