湯浅誠講演「人らしく生きさせろ、取り戻せ労働者のきずな」

シズウェルで行われた湯浅誠さんの講演会に行ってきた。
これは「春闘交流会」という静岡県職員組合の行事の一環なんだけど、一般にも公開されるのを知って行ってきたわけだ。
リアルタイムでツイッターを通じてメモしておいたので、ここに追記した上で再録しておく。


全体的な印象として、可視化出来ていない貧困が多いという指摘を通じて、まだまだ社会の貧困に対する認識が甘い、と指摘しているような感じだった。
また当然出てくるはずの、今回の講演のホストでもある公務員など安定席雇用者に対しての分配要求に対しては消極的だった。本音か計算かは見えなかったが、労働者相互の補正ではなく、必要消費支出を抑える政策の実現での生活安定化を図ろうとしているようで、その点には説得力があった。






「子供の気持ち」のアンケート。日本は「さびしい」「居場所がない」が突出。


長時間労働、ダブルワークが原因の一端。競争主義が子供にも押し付けられている面もある。タメがない状態、タメとはもともとは個人のタメを表していたが、社会のタメについても考える必要がある。


経済的なタメだけではなくて精神的にがんばれると言う環境にあることがタメ、貧困とは広い意味でタメ全体を失うこと。孤立、気持ちもそがれる状態。貧乏で幸せはいても貧困で幸せはありえない。


タメはバリアのようなもので、イザという時に守ってくれる。おなじ失業と言うトラブルでもタメの有る無しでダメージが違う。月払いの仕事につけない、休めないなど。トラブルがトラブルを呼ぶ。
多重債務メンタルヘルス雇用居住の問題がひと月に発生する


なんでそんなになるまで放っておいたのか、という人はタメのある人、説教をしちゃう。タメのない人が増えているのは社会のタメがなくなってる。


三重の傘があった。 産業政策の傘 企業の傘 男性正社員の傘。しかしその傘に入ってた人は昔も少なかった。傘の外は昔から貧困。90年代以降はその傘が3つとも閉じてきた。護送船団の遅い船を沈めてきた。リストラで企業の傘が閉じるから家庭の傘も閉じざるをえなかった。


失業者の姿は?扶養してくれる人がいない、扶養する子供がいる、メンタルを病んでる、貯蓄がない、賃貸住宅に住んでる。職業訓練を受けてない、など。雇用保険の対象者は23%。第2のセーフティネットは利用者5万人未満。


生活保護水準以下の捕捉率は3-6割。法的な仕組みから洩れても多くの人はなんとかしてるのが現状。非正規失職者26万人のうち9割は実家に戻っている。しかし家族の傘は確実に弱っている。高齢者が失職者を支えている。年金に頼るから死亡届が出せない。


支えてる高齢の親が失業者の事情を理解出来ない。ちゃんとしろと言われる。派遣村で実家に帰れずホームレス状態になった人を可視化出来たが実家に帰った人の問題を可視化出来ていない。


貧困問題は都会の問題だと言うイメージだが、身近な個々の家の中の問題。家から出ると大都市に行かざるをえない。だから地方では見えない。


すべり台社会。こどもの貧困。所得再分配機能の弱さ。子供に限っては所得再分配したあとの貧困率の方が高くなっていた。子ども手当で是正へ。しかし受けられる教育に違いがある。
小学生から生活の中であきらめの連続、社会に出るときに夢を持っていない、すると向上心を持てと怒られる。


自己責任論は自分を免罪したがってるから言ってる。責任を強調してるようで究極の無責任。正当化の理由の一つが「あの人達は怠け者」というイメージ。


相対的貧困ラインを下回る有業者世帯の割合。先進国の中で8割を超えてるのは日本だけ。しかも共働きが圧倒的に多い。貧困層の4割が共働き。アメリカでも2割。OECD平均でも17%。イギリス5%、ドイツ2%。
日本では貧困層のうち無業者世帯は2割以下。


子育て世帯の貧困率は14%。しかし失業率は0.4%。貧困状態にある奴等は働いていない、という偏見を払拭しなければならない。


貧困化がNOといえない労働者を生む。ホームレスはハローワークにいかない。月払いの仕事しかないから。日払い・住み込みの仕事以外探しようがない。ボッタクられようが行くしかない。労働市場は全体として劣化して行く。


レーガノミクスから言われていた底辺への競争がアメリカに学ぶことなく止まらない。社会的に放置されてきたのと同じ期間、回復に時間がかかり、社会的な負担は高くなる。早めの対策が必要。野宿して働いてお金を貯めてアパートを借りた人は2人しか知らない。常人には無理。イチロー以上の努力が必要。


日本の所得再分配機能が弱い。所得低位20%の所得シェアは6.7%、直接税保険料のシェアは7.9%。
高位20%は所得37.5%、税保険料のシェアは39.3%。


給料は年功給だが、支出の構造との兼ね合いがある。子育て費用、住宅費。均等待遇を導入しようとすると正社員が食えない。非正規が取り残されれる。収入と支出はセットで考えて労働問題は労働市場だけで考えてはいけない。


低所得者の住宅政策。子育て・教育・住宅は日本が怠ってきた政策。子育て・教育は充実してきたが住宅はまだ未着手。


失業者が相談に行っても窓口でたらい回しで取り残される。寄り添い型の支援が必要。労働組合は戦う準備が整った人だけを支援してきたのではないか。その力のない人の相談を受け止められてきただろうか。


トラブルは復号化してきている、支援のネットワーク化が必要。「そこまでやれない」が貧困を拡大してきた。自分の問題として取り組むことが「労働者の絆」


質疑応答。データの出典について。正規雇用同士でも世代によって賃金カーブが違う点について。「賃金分配率自体が削られてきている。」
上の人の賃下げも必要では?「上の人がお金が余ってるかというとそうではないから現実にはそう動かない。正規非正規の対立は不毛だから支出収入の両面から」


質疑応答。正規非正規の区別について「正規非正規の他にフルタイム非正規・なんちゃって正社員がいる。区別が曖昧になってる。正社員がうまいこと使われてる。常用雇用が正規だと言葉が転訛してる。」







最後の質問は俺がした。時間オーバーしてると焦ってしゃーないな。