100万円と苦虫女

シネギャラリー右側で14:55の回。満席。

いろんな成り行きで100万円貯まるたびに自分を知る人のいない土地に流れていく、蒼井優蒼井優による蒼井優のためのロードムービー
とはいっても実家→海の家→桃農家までは最後の地方都市でのドラマのお膳立てに過ぎない。日本中を転々としまくるシリーズの拡大版最終回という感じ。

自分探しではない、と作中で明言されている。自分は探さなくてもここにいる、逆に逃げている、と。
そして探さずともここにいる自分は、出来るだけ他人と摩擦を起こさないように当たらず触らずの人間関係を築いている。その人間関係が自分を圧迫する頃を見計らってリセットの旅に出る。
なのにそうとも知らず、美人ということもあってなんとか絡もうとする男、それを見る苦虫顔がなんともいい。

旅を重ねるにつれて徐々に自分を打ち明けるようになってくる。そしてきっかけがあって心のすべてを開いた時に、世界が変わる。しかしその世界は伝えるべきことを伝えられない、若気の至りの世界。
100万円貯まった後にどうするのか、伝えなかったことからほころんだ絆は取り返しがきかない。
そして旅が続いて映画は終わる。

ただ俺はこれが最後の旅立ちだと感じた。出会いと別れの後に確実に幸せへのステップを踏んでいるから。逃げてるとか言いながら、自分の人生に誠実に向かいあってるから。