空気人形


シネギャラリー右側で19:30の回。客入りは10人ちょい。

ペ・ドゥナは誰かに似てるような気がするけど、誰にも似てないような気がする。いま、あのすっとぼけた感じを出せる女優って日本にはいない。昔なら西村知美とか佐野量子とかいたけど。
たしか2004年だったと思うけど、シネギャラリーで韓国映画特集をやったときに「子猫をお願い」を見に行って、一目惚れしてしまった。
そしてとうとう本作ではおっぱいである。正直なところ、ペ・ドゥナのオパーイを目当てに見に行ったことは否定しない。


ペ・ドゥナの空気人形の演じ方が目が生きたり死んだりしてすげー、とかオパーイが、とか思ってるうちに、どうも大事な部分をいくつか見落としていたようだ。そこに気がついたのはラストシーンだった。
要するにこのストーリーの主人公はペ・ドゥナだけど、テーマはペ・ドゥナにはない。むしろ派遣の女の子にある。中身を必要とされていない空っぽのお人形さん扱いされてる女の子が、自分の心というものに気付く仕組みこそがテーマになってそうだ。


そう思うとこの映画に描かれているのは、人と人とのつながりであり、そのつながりの中から思いがけない形で人の心というものが生まれていく過程だ。
それを強く意識させる場面ってのがいくつかあって、例えば「おめでとう」とみんなが拍手をするところとか、作り物である主人公と同型の存在が大量にストックされている場面とか、どうも新世紀エヴァンゲリオンを彷彿とさせた。あの作品も孤独とか人の心というものを描いていた。


といったあたりに気付くのが遅かった。
思い出せるだけ思い出しても、この映画についてなにか語れるほどにはよく覚えていない。ただ、この映画について語るべきことはたくさんあったはずだ、と歯ぎしりをするのみ。