物分かりの良過ぎるバカ

俺がどのくらい物分かりの良過ぎるバカかと言うことは、以前にも書いたことがある。
http://d.hatena.ne.jp/RRD/20081111/p3
一を聞いて十を知る、まさにそのもの。話し相手が少し話しただけで言いたいことが全部分かって、あっという間に相槌打っちゃう。相槌を早く打てることに関しては自信がある。オリンピックの種目に相槌があったら、間違いなく金メダル級だよ。
問題は、相槌ってものは、早く打てば早いほど嫌な顔をされるってことで。


物分かりの良過ぎるバカは不幸しかもたらさない。
消費税にまつわる議論で漠然とそう感じていた。自分が苦しむのを分かっているにも関わらず、消費税に賛成する連中を見て。
確かに消費税は財源として必要なんだ。でも、その前に優先させるべき問題があるのに、進んで首を差し出そうとする。バカだと思う反面、理解もする。物分かりが良過ぎるんだ。


最近この「物分かりの良過ぎるバカ」の姿が浮き彫りになることが多くなってきた。


例えばこういうの。

“派遣は、正社員と同じ食堂でメシ食うな!”という大企業も…派遣大手「路頭に迷う派遣社員救えず、つらい。切ない」
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1200999.html

に対するブックマークコメント。

id:ezookojo
社員食堂は会社の福利厚生の一部だから、他会社の社員である派遣社員が使えなくても別に問題ない
id:s-miyashita
雇用関係はあくまで派遣元なわけで、文句の矛先がそもそも違う
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1200999.html

この2人や、これにスターをつけてる衆が悪いってわけじゃない。なにせ正しいんだから、この件に関してのミクロ視点では。しかし、実際のところ、企業は労働者が団結しないように、一部の労働者に特典を与える。そういった分断政策として、この手の差別を行っていることは疑いようがないんだ。


食堂に関する数字は知らんけど、12月17日放送のNHKクローズアップ現代という番組で、派遣労働者について取り上げられていた。
この中で面白いデータがさらっと紹介された。
メンタルヘルス管理のための窓口が社内にあるか。
上場企業に限った数字で、正社員にはほぼすべての会社で整備されているが、派遣労働者には4分の1しかない。
id:s-miyashitaなんかは「文句の矛先が違う」って言うだろう。。派遣会社がメンヘルの相談に乗れ、と。確かに、正しい。
しかし、じゃあ直接雇用である契約社員に関してはどうだ?っつーと、実は半分の会社しか対応してないんだわ。
http://www.j-cast.com/tv/2008/12/18032491.html


次長課長の河本風に言うと「派遣に食わせるタンメンはねえ!」を正当化するのに、派遣労働の制度論を持ち出す必要なんかないんだよ。単に待遇の差別化をしたいだけなのに、なんでそれを隠蔽したがるかな?
答え。物分かりが良すぎるから。だから会社よりさらに先回りして、正社員である自分の待遇を正当化するんだよ。


もうひとつ、物分かりが良過ぎるバカの話。
ここの雇用流動化うんぬんの論に関しては稿を改めるにして、日本の労働組合って存在がいかに「物分かりのいいバカ」であるかが描かれていることに関して。ここまで白状するのは血を吐く思いだっただろうことは容易に伝わってくる。

組合としても(中略)企業がつぶれては仕事がなくなる という課題を抱えていました。
(中略)
組合としても、倒れそうな企業から賃金をむしり取るような交渉はできず


http://d.hatena.ne.jp/yellowbell/20081217

経営側が労働者より多くの取り分を取っている以上、お前の取り分をよこせ、というべきだったんだよ。まあ、中小企業だと本気で経営者が身銭を削ってる場合もあるけどさ。
あるいは労働組合が積極的に経営に口出しをするべきだったんだよ。関与できないならそれを理由に戦うべきだったし、口出ししてもどうにもならない会社だったら、責任もって労使ともに心中するべきだった。


でも実際は物分かりが良すぎて、経営側に「いい子いい子」されて、取り込まれちゃった。
労働者の味方がいなくなっちゃった。形式的には労組があっても、実態は会社の(ムダ飯食らいの)一部門。さっき書いた「労働組合が積極的に経営に口出しをするべき」ってそういうことじゃねーよ。労使が一体化してどうするよ?
まさに産業革命前後の労働基本権が確立していない時代そのものと言っていい。


結局さ、俺も含めてなんだけど、物分かりのいいバカってのは、媚びてるんだよ。先回りして、自分の身を削って、ご機嫌を取ろうとしてるんだ。そして先回りした快感に耽り、身を滅ぼしていく。
こういうのを大手を振って歩かせてると、間違いなく国を滅ぼすよ。