「それで、ここに来ちゃったわけ?(バーカでー)」

中小企業白書を見ると、1年間に10万社弱の会社が出来るようだ。
もちろん東京とか大阪とかが多いんだろうけど、単純計算して人口1000人に1社の割合だ。
人口70万人の静岡市でいうと1年間に700社、平日1日3社といったところか。


ところで会社作るときに自分で手続きする人がどれだけいるんだろうかね?ほとんどいないのも道理、行政書士に頼んだってネットの安いところだと10,000円かからないし、それで済むんだったらそうしちゃったほうがいいよ、ってのが実際やってみての実感。


静岡で年間700社、ほとんどが代理人が手続きをする。俺だって次からはもっと簡単に作れる程度のもの、代理人にとっては手馴れた仕事だろうし、右から左に流すように会社を作っちゃうんだろう。
今回は迷いながら、間違いながら、手続きを進めた。それでもずいぶんスムーズに進んだものだと思ってる。
役所にしてみれば年に1人いるかどうかの闖入者なわけで、一昔前の役所だったらひどい扱いをされてたと思うよ。


俺なんかは法律で素人でも出来る手続きなら自分でやっちゃうタチで、あちこちでずいぶんな目にあってきた。
まず、呼んでも完全無視されるパターン。呼ばなきゃいけないのか、呼ぶならどこで呼べばいいのか、呼ぶ必要はなくてどこかに書類を置けばいいのか、それすらも分からないまま放置されるとか。


客商売でいうと来たやつを無反応に放置するのは一番やっちゃいけないんだけど、自分たちは商売じゃないって思ってるから放ったらかし。
ドラえもんの夢の道具のうち、「石ころぼうし」だけは実在するね。


よく客が来るなら告知を掲示するなり、普段から客が来ないなら客がいるという不自然な状態になってるわけだから、危機管理の意味からも認知していることの意思表示が必要なところ。
そしてなによりも接客で起きるトラブルの大半は、このときに大なり小なり問題があるからトラブルんじゃねーの?


来訪が認知されて反応してもらえた時によく言われたのが、事情を説明した後の
「それで、ここに来ちゃったわけ?(バーカでー)」
失礼だよなー。案内も誘導もないから素人判断して来ちゃうんだろうが。
「あそこに案内貼ってあるんだけどなー・・・、あれ、ないね?どこいったんだろ?」


下手すりゃ4人がかりで指差されて笑われたりしたことがあった。正確に言えば1人が俺を指差して、3人が笑ったんだけどさ。
「これ、もう締め切りすぎてるんだけど?」
「ポスターが貼ってありましたし、そのポスターには締め切りが書かれてませんでしたけど」
「あー、ごめんごめん、本当だね(笑)」
この時の連中がまだいるのかどうかは知らんけど、またこれからあの役所と接点が出来そうでゲンナリしてるし、だからどこでの話かは名前は出せない。


こういうことの積み重ねで我慢が限界まで来てると、最後の最後に小さいことで大きなトラブルになる。
なのに最後の最後の担当者が
「こんな小さいことでキレるなんて、モンスター何とかじゃね?」
とか思っちゃうからどんどんこじれていく。


首尾よくトラブルの全体像が解明されても
「モンスター何とかが俺には関係ない話で俺にキレた」
一方その頃、最初の担当者は自分は関係ない、最後の最後の担当者のトラブルだ、と思ってた。


だから最初の一言には気をつけろ、ということになるわけで、接客業ではそれがマニュアル化されたりしてる。
役所(特に部外者との接点が多い部署)も段々そうなってきてるね。
これは立って敬語で挨拶するとか、そういう次元の話じゃなくて、
 
 

-最初に行くべきところがはっきりしている
(客目線でわかりやすい様式化された表記表示や総合案内の設置など)
-すぐに存在を認知してくれる
(整理券発行機の設置や、すぐに対応できないときの「少々お待ちください」などの一言)
-そこで取るべき行動がはっきりしている
(待つのか書くのか話すのか移動するのかの、的確な指示と正確な引継ぎ)
-相手からどう見えるかを人として最低限考える
(指で指したり、笑ったり、ため息ついたり、不安を煽ったりしない)
 
 

こういうことの徹底が、起こす必要のないトラブルを減らし、回りまわって自分の身を助けるんだ、ってことをこれから公務員は肌身に感じ始めるんじゃないかと思う。
対応が悪い、って一度ついたイメージを払拭するのには時間がかかるから、即効性は感じられてないだろうけど。


なんにしても今回はあちこちの役所で右往左往したけど、素人がさまよった割りにカチンと来たのは「なんで定款作る前に俺のところに来ないんだよ、イレギュラーな仕事は面倒くさい」オーラを発してた登記所の相談窓口の右側のおっさんだけ。
あとはびっくりするほど良くしてもらった。「(そこまでしなくても)いいですよ」って言ってるのに、おじいさんの手を引いて横断歩道を渡るように向かいのカウンターに連れて行ってくれたり。
感謝。