市橋達也容疑者と俺

2009年11月9日の静岡新聞夕刊から。

市橋容疑者は昨年9月10日、大阪市西成区で、作業員を募っていた同社幹部に雇われ

昨年9月10日、俺は西成の元ドヤのホテル来山で朝を迎えた。
http://d.hatena.ne.jp/RRD/20080910/p1
釜ヶ崎という高齢化が進んだ街では、アラフォーの俺でさえ若すぎて浮いてしまっていた。
俺より若い市橋達也容疑者はさぞかし浮いて目立つ存在だったことだろう。記憶をたどってみるが、整形後のあの顔で、常時着用してたという赤い帽子・黒ブチメガネ、やはり見た覚えがない。


太子交差点で手配師に声をかけられた。そばの車には「茨木」「長期」「7500円」という表示があった。
ただ人手がほしいだけだったらハローワークのそばに行けばいいはず。離れた太子交差点で声をかけてるところを見ると、ハローワークに集まる衆ではなく、若い手だけを求めていたようだ。
前の会社の退社が10日後に迫っていてやや不安が残っていた俺にとっては、「少なくとも俺には1日7500円の価値がある」と自信を持てた出来事だった。
もしかすると俺の後ろを市橋達也容疑者がとぼとぼ歩いていて、あの車に乗ったのかもしれない。「この整形は見破られない」という自信を持てた出来事だったかもね。


なんで飯場に紛れ込まなきゃいけなくなったのか、かくまってくれてた人に捨てられて、手切れ金代わりに整形費用を出してもらったのだろうか、とか、はじめての土方仕事だろうし不安も大きかっただろうに、もし正体がバレたら一生タコ部屋から出られなくなるんじゃないか、とか、その辺の事情を考えると切なくすらなってくる。






とか思ってたんだけど、どうも実際は

昨年8月19日、日雇い労働者らが集まる大阪市西成区で作業員を募集していたとき、市橋容疑者が声をかけてきた。「助けてくれ。お金が必要なので使ってほしい」

http://www.asahi.com/national/update/1110/OSK200911090152.html

「金が必要だ。助けてほしい」。市橋達也容疑者(30)は昨年8月、大阪府茨木市の建設会社の採用担当者に訴えた。募集会場の大阪市西成区からバスに乗り込み、約3畳半の会社寮で住み込みを始めた。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091110/crm0911100019000-n1.htm

要するに8月19日に募集のチラシかなんか見て選考会みたいのに出かけて行って、会社寮にそのまま連れて行かれて、雇用契約が始まったのが9月10日ってことなんだろう。
俺の後ろを歩いていて、俺が同情した市橋達也容疑者はこの世の中には存在してなかったわけだ。


勝手に世界を作ると危ないなーw