伽音の日本一の550円弁当
半年ほど前からほぼ毎日昼時に、静岡の中心街にいる。
正午ごろに青葉スクエアの横、マクドナルドの斜向かい、ふしみやビルに行列が出来るのをご存知だろうか?
まあ大体のところ、行列する衆にロクな衆はいないと思う。かく言う俺も、パチンコ屋の開店に並んで食ってた時期があるから大きなことは言えないが。
ふしみやビルの1階は化粧品店かなにかになってて、並んでるのは年配の女性。
最初のころは、あやしい化粧品かなにかで、催眠商法かマルチ商法の美味しい部分だけをつまみ食いするのに並んでるのかなー、程度に思った。でもよく見ると、行列の向きは地上の店舗から並んでいるのではなかった。むしろ、地下の飲食店から並び始めてるようだ。
地下の飲食店って、昔は紅虎餃子房だったところまでは知ってるけど、そのあとどうなってたっけ?
調べてみると、「駿河ダイニング伽音」という店になってるようだ。
静岡市葵区呉服町2−3−1 ふしみやビルB1F
ランチでもやってるのかと思ってたんだけど、どうも昼行っても営業してる気配がない。ということは並んだ人以外はお断りなのか、どこかに連れて行かれるのか?もしかしてなにかの秘密結社とか?
なにやら狐につままれた気分になってモヤモヤしてた。
先日、意を決して並んでみた。並んでるのは年配の女性だけ、女性限定のなにかなんだろうか?先に並んでる人に聞いてみよう、と思うまでもなく、勝手に前のおばちゃんがあれやこれや自慢げに説明し始めた。
結局その日は目的を果たせず、手ぶらで帰ることに。
つーことで今日、リベンジ達成。
要は20食限定の弁当なわけだ。値段は550円。
ところがこの中身がすごい。
同封された献立表によると
「特選牛のローストビーフ 赤ワインソース」
2切れ。俺、この10年、こんな牛肉食ったことがないよ。柔らかいとか以前に肉自体の香りが柔らかいんだなー。
「鮪の竜田揚げ タイ風ソース」
意外とソースが控えめ、竜田揚げの部分も控えめで、鮪の魅力が全開。
「手羽先のピリ辛煮込み」
骨がするっと外れる。かといって熱を加えすぎてボロボロってわけでもない。ピリ辛は控えめながら手羽先特有の脂やクセがまったくなく、旨みのみ。
「中華風蒸し豆富」
あんかけになってて、酸味が大豆の香りを十分に引き立ててくれる。
「秋刀魚の利休焼き」
脂が適度に落ちてて、上手く秋刀魚を「料理した」という言葉がふさわしい。
「わさび菜のおしたし」
漬物かと思うほど爽やか。
「蕗の南蛮漬け」
これは辛かった!でも辛さが一瞬で引いて軽やかな苦味が尾を引いた。
「自然卵のだし巻き」
甘い玉子焼き。ケーキのようにではなく、あくまで玉子焼きとして美味い。
「安納芋の大学芋」
ねっとりとしていて、甘さがまとわり付いてくるけど、まったべとつかず、さらっとしてる不思議な大学芋。
これ、すごいよ。
献立には「コストがお弁当の倍以上かかってる」と書いてあって、それもそのとおりだと思う。実際のところは500円が材料費、500円が固定費で、コストが倍、という計算なんだろう。
容器が安っぽいけど、商売で売るんだったらちょっといい容器に入れて1500円以上相当だろうね。
店で出すのなら、これに刺身を数切れつけて3000円の御膳とか、そんな感じ。
もっともそんな商売をするよりも、こうやってお客さんに喜んでもらった方がいい、という考えなんだろう。
どういう思いで商売をしてるのかが一番伝わるし、なによりクチコミ宣伝効果がすごいと思う。だって20分ほどだけど、通る人がみんな見ていくし、「なんで並んでるの?」って聞いてくる人も多いもん。