「朝子」「デモーニッシュな街から遠く離れて」

静岡ピカデリー屋上旧プラネタリウムで「朝子」15:45「デモーニッシュな街から遠く離れて」17:30の北田直俊監督による2本立て自主上映会。客入りはそれぞれ6人、7人。

北田直俊監督って聞いたことがないけど、前作「イヌ」の評判は聞いたことがある。土方仕事で資金を貯め、異端の作品を作ったという。今日配られたパンフレットにはこう書かれている。

まるで自殺するかのように、社会に対しての憤怒にツバを吐き捨てるが如くのゲリラ・テロ行為的35ミリ自主制作映画であった。この世の全てに憎しみをいだいていましたし、事実この映画を完成させたら、首をつって<オサラバ>する意志でした。

それを救ったのが新しくできた恋人、しかし彼女こそが自殺をしてしまった。
そこからつながるのが「朝子」という作品。ストーリーには救いがない。
実父から性的虐待を受けたり彼氏に自殺されたりの過去を持つ朝子、立ち直って結婚した相手は愛情を与えてくれない。それも道理、実はゲイであることが発覚。性欲の高ぶりを抑えられなくなった朝子はヤリマン道へ。しかしそれが夫にバレて離婚、挙句集団レイプにあって最後には飛び降り自殺。



「デモーニッシュな街から遠く離れて」も結局は自殺がらみ。自殺するするというメンヘル女と付き合っていて、ちょっと邪険にしたら死んでしまった。彼女の面影を追って青森に向かうロードムービー
なぜ青森なんだろう?と思ってたら、実はイタコに会いに行く旅だったw



両作品に共通して言えるのは、無駄に長い、の一言。ワンシーンワンシーンが必要以上に長いのよ。ともに2時間ほどの作品だけど、普通の映画なら1時間20分くらいに絞れるだろうし、AVだったら15分くらいで終わってしまうような内容。
説明としては不要だし、絵柄として優れているかといえばそうとも思えない。質感みたいなものは全く感じなかった。これはプラネタリウムのドームへの投影、しかも石油ストーブの火が明るく輝いてたからかもしれないけど。


描写としてはいいシーンがたくさんあるんだけど、なんかもったいない。
自主制作臭のただようエロい場面は、いかにも素人もののエロっぽくて妙にリアル。
水着の広末奈緒が海に浸かっていて、雪原にいる主人公が向かっていくと、スクリーンに広末奈緒が海に浸かっている映像が映写されて、主人公がその映写の光を邪魔するような影の形で二人合わさるような、うまく言えないけど見たら分かる、あれなんかも優れた表現だよなー。


「デモーニッシュな街から遠く離れて」の予告編でも後半に使われている小谷美紗子のThe Stoneがまるまる一曲流れる場面がある。つーかそれ以外に劇中音楽がないから更に輝いてくる。
これがまたいい曲だし、この映画にものの見事にハマってるし、またこの場面が素晴らしくいいんだ。こういう、この曲を聞かせるためだけにこの場面を作っただろ、ってのはタテタカコの「宝石」をまるまる一曲聞かせた「誰も知らない」以来だ。



一度川に捨てた彼女との接点であるメガネを這いつくばって探すんだけど、これさー雪解け水だときちんと表現出来てるのよ。水の冷たさと、その冷たさを全く感じられないほどの後悔が痛いほど伝わってくる。


そういう場面があるだけに、この冗長な編集が本当に残念。 
監督は映画が好きで、撮るのが好きで、撮ったものが好きで、だから切れないんだろうなー。