テストドライバー

「テストドライバーをやりませんか?」って電話がかかってきたのが先週のこと。
マスコミやライバル社のスパイを強固な警備でシャットアウトしたサーキットで、秘密の新開発車を時速数百キロで疾走させる俺。
うっひょー、そんな話があるものか?と思って、やりますやります、と二つ返事。


で、現実。
待ち合わせ場所の静岡駅北の交番の前で待っていると、いかにもイベント屋という風の兄ちゃんに声をかけられ、乗せられたハイエースには俺よりも怪しげなおっさんが5人乗ってた。
車は東名高速経由で掛川駅へ。ここでそれぞれレンタカーを借りて運転して、遠州浜名湖鉄道円田駅そばから第2東名へ。
ここで他の衆と合流して、車は10台、人間は20人。ここで2人1組を組めという。うわー、俺、こういうの、嫌い。しかもその2人組で、狭い車内で1日を過ごすことになるようだ。
その説明をされた瞬間、俺はとっさにポマードくさい隣のおっさんから逃げたけどねw。
ところが、運転してこなかった衆が運転してきた衆を選べという。どーん、運転してきた俺に選択肢、ねえじゃん。


この時に俺が考えたのがマジシャンズチョイスだ。客に自分の意志で選択したと思わせて、実はマジシャンの術中にハマってマジシャンの意図する選択をしてしまうテクニックがある。詐欺師の手口でもある。
たとえばAとBという道具があったとして、使いたいAと使いたくないBの選択肢を客に提示しておいて、どちらかを選ばせる。客がAを選べばそのままAを使い、Bを選べば「ではBを持っていてください」と言ってAを使う。


えーと、この場合はどういうマジシャンズチョイスを使うべきだろう?と考えてるうちに、俺を選んでくれた人がいた。おかげでいい一日になった。
聞くと、あるパフォーミングアートをやってる方で、ライフスタイルも興味深い。
持参のカモミールティーをご馳走になった。俺もネットカフェやファミレスのドリンクバーでハーブティーには馴染みがあるつもりだったけど、全然違うわ。ドリンクバーのハーブティーティーバッグがガラスの切れ端だとすると、本物のカモミールティーは真珠のようだ。丸みと深みが全然違う。


3時間近い待機の後、第2東名本線へ。時速数百キロはおろか、時速30キロ厳守で10数分、本線上に設置されたテストコースへ。
3車線と両脇に路肩。ここで時速30キロでの走行と車線変更と回送を繰り返す。次に指定位置での停止と発進を繰り返す。時速30キロをキープするため、ずっとローギア。くっそースピード出してえ!
ここで行われているのは車のテストではなく、道路上の感知カメラのテスト。写真禁止のお達しがあったので画像はないけど、前方に停止車両があると、電光掲示板に自動的に表示されるようになってる。


うーん、事前に受けた説明ではセッティングのテストではなくてシステム自体のテストのようなんだけど、このレベルの動体検知ってライブカメラソフトでも見かけるし、とっくに実用化してるものだと思ってた。


このテストにさんざんゼニを使ってるんだろうけど、俺の取り分は11:30集合23:30解散の12時間拘束で9,500円。