重力ピエロ〜このタイトルはあらゆる評論を駆逐する

静岡ミラノ3で5月23日22:00の回。客入りは15人。

原作未読だけど伊坂幸太郎原作だから、そのまま映画にしてくれれば間違いはないだろう・・・、という期待そのままの作品だった。
派手さはないけど、地味にいいよね。

兄弟で追いかけている連続放火犯の正体は割りにすぐ分かったけど、その理由にきっちりとミスリードが効いていて、すっかり騙された。犯罪者の血を引いているから遺伝子が放火に駆り立てているのだとばかり思ってた。


この犯罪者性向のある遺伝子ってのは、その存在不存在やその研究の是非自体が議論の対象になってたりする。ある一定の遺伝子を持った人が置かれた環境によっては犯罪率に顕著な差が出るという研究もあるし、下手すりゃ犯罪者遺伝子をデータベース化しろ、とか言う奴も出て来る。
でもなー、人は生まれながらにして平等に社会の一員である、この大前提が崩れた時に近代社会ってのは大崩壊を始めるんじゃないかと思う。


この映画からは兄が弟の持つ犯罪者の遺伝子をどう見ていたのか、そこが読み取れなかった。弟が放火犯だと分かった時、その放火の理由をなんだと思ったのだろうか?
それともそんなことは兄弟の間ではどうでもいいことなんだろうか?


とか、伊坂幸太郎がわざわざこの物語に「重力ピエロ」と名づけた意味をあえて無視して書いてみた。だって、このタイトルと、元になったエピソードの持つ説得力はあらゆる評論を駆逐するから。
なんにしても不思議な余韻の残る映画で、エンドロールに仕掛けがあるわけでもないのに、客電付くまで誰も席を立たなかった。