食品の通販は難しい〜クーポンおせち騒動はなぜ起きたか・1

おせち騒動も一段落して、グルーポンは詐欺でした、バードカフェは詐欺でした、まる、なんて短絡的なまとめがされつつある今日このごろ。
ただ、このトラブルって本来は3つの要素が組み合わさった問題で、それぞれをバラして考えてやらないといけないと思う。
その3つとは、食品通販の観点、新規顧客獲得コストの観点、そして起業家経営者に特有なポジティブ思考の観点だ。
で、今回からそれぞれの視点から3回に渡って書いてみたいと思うんだが、このブログでそういう企画の2回めがあった試しがないことは誰も知らない。


俺がネット通販を仕事にするようになって12年がたつ。
そのうち10年は本とかゲームソフトとかそういったものを扱っていて、その色が身に染み付いてしまっていることに気づきすらしなかった。
ところが去年から食品の通販に携わることになって、そのまま俺が主導権を持ってやってたらエラいことになってただろうね。バードカフェが他人事じゃない。


食品は通販商材としては一般的だけど、その扱い方は食品特有のノウハウの必要な特殊な商材だ。
というのは食品はナマモノである以上に生き物だから。
食材の生命体としてはその命は尽きていても、細胞がまだ生きているし、あるいは食品には必ず有害無害を問わず微生物が付着してるからだ。
だから商品の状態は刻々と変化するし、その変化には個体差が大きく生じる。突然変異だって普通に起きる。
熟れるまで数日かかるはずの固いトマトやメロンが発送翌日には熟れすぎてぐちゅぐちゅになってる、なんてクレームは珍しくない。
食品の通販に万全なんかあるのだろうか?俺には答えが見当たらない。


たとえばバードカフェのおせち詰め込み作業風景の写真に対して、従業員がマスクをしてないとか私服で作業してるとかの批判がある。
はっきりいってマスクをしようがしまいが、何を着てようが、実際に出来上がるものにはあまり大きな差はない。
しゃべりながら詰め込んで、ツバが多少かかったって、それで即腐るわけじゃない。だいたい大丈夫だ。
という、そんな発想で食品に関わって、先人の知恵で簡単に減らすことの出来るリスクすら放置して、万全なんか見えない食品通販の世界で利益をあげていけると思ったら、やはりその認識は甘いと言わざるを得ない。


俺が従前関わってきた古本なんかの中古商売とは根本的に違うのは、食品は商品が皮膚という人間にとって最強の防御機構を突破して肉体の中に入り、命を危険にさらす点だ。
リスクの高い食品を送り付ける行為は、いうならばお客さまにカミソリ入りの封筒を送りつけるに等しい。
なにを送っているかの自覚がないから、クレームの想定範囲の設定が甘い判断をしてしまう。その結果がおせち騒動の本質の一つだ。


ツバがかかっても拭けばすむ中古商売の色が付きすぎていた俺にも最初、その認識がなかった。幸いにして厳しく教えられる機会に恵まれた。
俺は幸いだっただけだ。
だから調子に乗ってたサーファー社長に対するムカつきと同時に、同情心のようなものも感じている。


異業種から食品への参入は本当に難しい。